会社の株価を下げて息子さんに全株を贈与する方法です。 非上場会社の同族株式の評価には、 純資産価額と類似業種比準価額 2 つがあります。会社の従業員数、総資産額、取引額などで両価額の採 用比率が決まります。たとえば、従業員数を増やすと、比率も変わりま す。 純資産価額 は、資産と負債を時価で評価して株価を算出します。会社 の資産の評価を下げると、株の評価も低下します。資産の評価額の違い を使った 第1章ー1 の様な方法が使えます。 類似業種比準価額 は、同業種の上場会社の株価を基に、自社とその上 場会社とで、配当、利益、純資産を比べて株価を算出します。類似業種 比準価額は、自社の配当額、利益、総資産額などが下がったり、比較先 の上場株式の株価が下がったりした時に下がります。たとえば、代表者 が退職し、退職金を多くとると利益が減り、純資産も減って純資産価額、 類似業種比準価額ともに下がります。 2017年 1月 1 日から類似業種比準方式が改正されます。上場株価の 取り方に 2 年間平均を加えたり、上場会社の配当額、利益、総資産額に 連結決算を反映し、各比重は 1:1:1 とする改定があります。 非上場会社の同族株式評価は複雑で、専門家に依頼するのが賢明です。 2015 年以降に使いやすくなった中小企業の事業承継税制利用による 相続税対策があります。以前の制度ではAさんは役員に残れませんで した。改正以降は代表権さえ譲ると、取締役会長などで自社に残れま す(効果や適用条件などは 第4章 ー 12、13 を参照)。 対策1 対策2 との併用も有効です。 対策1では株式上場の夢は果たせない 上記の対策1では株式の上場ができないこと、会社の解散時は残 余財産が後継者にほとんど残らないことなどが短所です。 そこで、対策1はやめて株式公開を目指すのも一つの手です。相 続した株を市場で売り、相続税を支払います。 税務のプロが語る 「知っ得話」 〈対策2 自社の株価を下げて後継者に贈与〉プロの助けが要る策 〈対策3 中小企業の事業承継税制の利用〉2015年から注目策に (10億円 - 3600万円)× 55% - 7200万円 = 4億5820万円 → 予想税額 (150万円 - 110万円)× 10% = 4万円 → 贈与税額 4 億5820万円 - 4万円 = 4 億5816万円 → 節税額 〈このケースでの対策前の相続税試算〉業績好調で巨額に 上記対策1での税額の試算 〜 わずか贈与税 4 万円へと激減 〜 〈対策1 無議決権株式と社員持ち株会〉今すぐ着手できる策 Aさんは自社の全株を保有しています。税務のプロに相談すると、 業績好調な経営状況から保有株式の評価額は10億円にもなってしまう ことがわかりました。 多額の相続税試算額に驚き、税務のプロから対策を出してもらいました。 会社の支配権を残し、無議決権株式と社員持ち株会を利用して税金を 大きく下げる方法です。まず自社の全株式(2000株でAさん所有と設定)の うち、3株だけを残し、1997株を無議決権株式とします。株主全員の同意 が必要ですが、Aさんが全株を所有しているので、無理なくできます。 次に従業員に従業員持ち株会を作ってもらいます。無議決権株全株を社 員持ち株会のメンバーに、会社設立時の1株5000円の半分の2500円の株 価で譲ります。このケースの会社は今まで増資も無く、資本金等は1000万 円のままで、配当もしてこなかったので、この株価で評価ができます。 さらに、息子さんに議決権のある3株だけを贈与します。全株の評価額 は10億円でしたので、1株50万円となり3株で150万円の評価です。 第4章 〈ケース〉 都内にある製造業の社長Aさんの会社は、独自の技術を 育てるなどの苦労の甲斐あって、増収増益が続いています。頼れる 一人息子もいて後継者として頑張ってくれています。ある会合で社 長仲間から自社株の相続の大変さを聞き、息子のためにも相続対策 を探ることにしました。 14 自社株を後継の子に譲る3つの策 会社の株式による相続 4