当初 5 年目のマンション経営の資金繰り ところが、ここへきて街の人口減と大都市へ移る人が続出し、空き 室が目立ってきました。マンション管理会社の要請で、2 割の値下げ に踏み切りました。 徐々に返済が難しくなり、銀行には返済の猶予を求めざるを得なくなりまし た。今後さらなる家賃下げや大規模修繕でもあった際には、資金を手当てでき そうもありません。子への将来の相続財産どころか、借金を残しそうです。A さんは「何のために苦労して相続対策をしてきたのか」と頭を抱える日々です。 家賃収入 毎月の家賃は 20 %減で年額 5200万円 借入金返済額 元利均等年4320万円(借入条件上記と同じ) 委託管理費 3 %、その他経費は同額200万円、 収支勘定は → 5200万円 - 元利金4320万円 - 管理費156万円 - その他経費200万円 - 税金約1000万円 = マイナス476万円 (不 足の赤字) 過大投資のリカバリー 資金繰り対策には借入金の借換えによる支払い期間延長や、金利 引き下げが有効です。また一部のマンションを高く売却して借入額を 減らせれば、残ったマンションをお子さんに残せる場合もあります。 税務のプロが語る 「知っ得話」 〈その後の収支・当初編〉5 年ほどは順調で家賃収入は黒字 8 年目のマンション経営の資金繰り 〈その後の収支・7 年以降編 〉状況が一変し、家賃を値下げ 〈その後の資金繰り・9 年以降編〉銀行に返済猶予を求める事態に 家賃収入 年額6500万円(住宅家賃収入は消費税非課税取引です) 借入金返済額は元利均等年4320万円(金利4%、1年据え置き34年 払)委託管理費3%、その他経費200万円 税金は固定資産税、都市計画税、所得税、住民税の合計 収支勘定は → 6500万円 - 元利金4320万円 - 管理費195万円 - その他経費200万円 - 税金約1140万円 = 645万円 手に残る黒字 5億円 ―(基礎控除3000万円 + 600万円 × 1人)= 4億6400万円 4億6400万円 × 50% - 4200万円 = 1億9000万円 → 予想相続税額 〈Aさんの相続対策前での税額試算〉 Aさんの相続税予想額(資産は土地 5 億円、Aさんは一人っ子と設定) マンション建設の翌年、Aさんのお父さんが亡くなった際の相続税額 〈Aさんの相続対策〉翌年の相続発生での納税額はゼロ 土地の評価額5億円 ×(1 ー 借地権割合60% × 借家権割合30%) = 4 億1000万円 マンション評価額 5 億 6000万円 ×(1 ー 借家権割合 30% ) = 3 億 9200万円 Aさんの相続資産 4 億1000万円 + 3 億9200万円 = 8 億200万円 Aさんの相続負債 銀行借入金 8 億円 Aさんの相続財産は 8 億200万円 - 8 億円 = 200万円 → 基礎控除の3600万円の範囲に収まるので、 相続税はかかりません Aさんのお父さんは評価額が5億円の土地を所有していました。母 は先立っており、そのままでは1人息子として高額の相続税が課せら れそうでした。 そこで、Aさんはその土地に高級なマンションを建てることにしま した。建設会社の言われるまま8億円の融資を受けてマンションを建設 しました。グレードの高いマンションでしたが、地方都市ゆえ賃料を 抑えてやっと満室でした。 第4章 地方都市で資産家のAさんの失敗例をお話しします。Aさんのお 父さんは広い土地を持っており、早期に相続対策を打つことにしま した。賃貸マンションが有利との話を聞き、建設業者に相談し、相 続税をゼロにできる豪華マンション建設を薦められました。土地と 建物を担保に借金する方式です。建設の翌年、父が亡くなりましたが、 相続税はゼロでした。しかしその後、借金の返済に窮する事態とな りました。借金による相続対策は要注意です。 9 相続対策で逆に借金を抱えるリスク 「相続対策の投資」の甘言に御注意 4