現預金は借金分が減りますが、株の評価額がプラスされます。 土地の場合は時価の概ね 80%、建物の場合には時価の概ね 70%程度 の評価額になります。さらにこのケースでは、土地は貸家建付地と小 規模宅地の評価減で下がり、建物も貸家の評価減で下がります。 下記の4方式で最も低い価額での評価とされます ●課税時期(被相続人の亡くなった日)の最終価格 ●課税時期の月の毎日の最終価格の平均額 ●課税時期の月の前月の毎日の最終価格の平均額 ●課税時期の月の前々月の毎日の最終価格の平均額 借金でリスクの高い投資は禁物 借入金による不動産事業や株式投資は相続税対策になりえるとは いえ、必ず儲かるわけでもありません。 たとえば日経平均株価は2008 年のリーマンショックで暴落し、5年ほど低迷を続けました。 予想のつ かない先々の相続の際に節税分よりも損失が上回ることのないよう、 リスクを考慮して慎重に検討するのが賢明です。 税務のプロが語る 「知っ得話」 3. 借り入れた2 億円で土地付きアパート(1 億円 ×2 棟)を購入した場合 〈借金で上場株式を購入〉評価額は以下の 4 方式のうちの最安値 プラスの財産 → 現預金1億円 + 賃貸用不動産評価額3600万円 × 2棟 = 1億7200万円 マイナスの財産 → 借金2億円 正味の財産 → プラスの財産1億7200万円 - 借金2億円 = △2800万円 正味の財産がマイナスなので → 相続税額は0円 正味の財産 → プラスの財産 現預金1億円 1億円 - 基礎控除(3000万円 + 子1人の控除600万円) = 6400万円 6400万円 × 税率30% - 控除額700万円 = 1220万円 → 相続税額 プラスの財産 → 元の現預金1億円 + 借り入れた現預金2億円 =3億円 負の財産(債務)→ 借金2億円 正味の財産 → プラスの財産3億円 - 負の財産2億円 = 1億円 正味の財産1億円 - 基礎控除額3600万円 = 6400万円 6400万円 × 30% - 控除額700万円 = 1220万円 → 相続税額 〈3つのケースで比較 〉対策なし、銀行借り入れ、アパート購入 1. そのままで相続に至る場合 2. 生前に金融機関から 2 億円借り入れして手元に置いた場合 現預金で1億円の正味財産があり、相続人は子供が1人と仮定します。 以下では相続の具体例を想定し、対策なし、銀行借り入れ、さらにその借 金で土地付きアパート購入という3 つのケースで順に比較しましょう。 借り入れによりプラスとマイナスの財産が同額増えているため、 結局 1と2の相続税は同額になります。 第4章 相続税の計算は、現預金や株券などのプラスの財産から借金や未 払金などの負の財産(債務)を差し引いた正味の財産に対して課税( 3章 ー 3 参照)されます。相続税計算の際、現預金は金額通りですが、 不動産などの財産や株式などは、通常、取引時価より低目に評価さ れます。これを生かし、借入金で賃貸物件経営や株式に投資する相 続税対策が考えられます。仮定のケースで探ってみましょう。 6 借金での貸家や投資の活用術 借金や投資を用いた相続対策 4