冒頭のケースは、左記1の死亡保険金の非課税が受けられる状況にあた ります。妻と子 2 人が相続人です。相続税を計算してみましょう。 ややこしい保険に関する税務を少し整理してみましょう。 なお、上記のような相続の保険金の扱いではなく、相続前から生命 保険を相続対策に生かす方策については 第6章 ー7 を参照して下さい。 保険金は受取人がすべて取得し分割できないので、このケースでは 配偶者 Bさんが 4000 万円を取得します。とはいえ、上記のように基礎 控除で 課税額はゼロになるので 、配偶者控除の適用は不必要です。 保険料負担者夫A  保険の対象者夫A  受取人妻B → 相続税 保険料負担者夫A  保険の対象者夫A  受取人他人 → 相続税 保険料負担者妻B  保険の対象者夫A  受取人妻B → 所得税 保険料負担者父C  保険の対象者夫A  受取人妻B → 贈与税 保険金受取額4000万円 - 死亡保険金控除(500万円 × 相続人 3人)+ 預金の遺産3000万円 - 借金1500万円 4000万円 相続税の基礎控除は3000万円 + 600万円 × 3人 = 4800万円 これは課税の対象の4000万円を上回るので課税額はゼロになります。 〈代表的な契約状況での課税〉夫 Aさん死亡時のケースで 4 通り 〈冒頭のケースでの課税〉受取人 B さんが保険金を全額取得 相続を放棄した場合の死亡保険金? 保険料負担者と被保険者がともに夫で、死亡保険金受取人が奥さん (配偶者)の場合、受け取った保険金は奥さん固有の財産となります。 税務上、死亡保険金は相続財産と見なされますが、本来死亡した夫の 財産ではないため、奥さんは相続を放棄しても死亡保険金を受け取れ ます。 しかし、この死亡保険金は相続放棄してしまうと奥さん(死亡保険金 受取人)の場合でも、死亡保険金の非課税の特例がありません。相続 税法上「みなし相続財産」として全額が相続税の課税対象になります。 税務のプロが語る 「知っ得話」 第3章 〈ケース〉 B さんは夫が保険料を払っていた生命保険の受取人にな っていました。先日不幸にも夫 A さんが亡くなり、保険金 4000万円 が支払われました。ほかに遺産の預金が3000万円、借入金(住宅ロ ーン)が1500万円ありました。 B さんから税務のプロに「自分と 2 人の子(成人)が相続するとして、相続税はどう計算したらいいのか」 との相談がありました。 生命保険金への課税はややこしい 死亡保険金の扱い 11 生命保険金の受け取りの際には、保険会社と契約をして保険料を支 払ってきた人(保険料負担者)、保険をかける対象者(被保険者)、保険 金を受け取る人(受取人)の3者の関係で、以下のように課税の方式が異 なってきます。 1. 保険料負担者が自分を対象(被保険者)に保険をかけていて、受取人 が配偶者や子などの相続人 であれば「みなし相続財産」( 第6章 ー ワイド版「知っ得話」その1 参照)として相続税が課せられます。 「死亡保険金の非課税の特例」が受けられ、500万円 × 法定相続人 の数が非課税となります。ただし保険金は契約で受取人の名義が定 まっており、相続で分割できません。 2. 保険料負担者が自分を対象(被保険者)に保険をかけていて、受取人 が共同経営者といった相続人以外の人 の場合、相続税が課せられま す。死亡保険金の非課税は適用できません。保険金は相続財産に加 わります。 3. 保険料負担者が他人を対象に保険金をかけていて、その人(被保険 者)が亡くなった際の受取人 となっていた場合には、所得税(一時 所得又は雑所得)が課せられます。 4. 保険料負担者が他人を対象に保険金をかけていて、その人(被保険 者)が亡くなった際の受取人もまた別の人 になっていた場合には 、 受取人に贈与税が課せられます。受取人が被保険者の相続人であっ ても同様です。 3