現金以外の相続人固有の不動産などで代償交付する方法もできます。そ
の際は時価で売却したのと同様に取り扱われ、取得価額等を差し引いて利
益が出ていれば、その利益分に対して譲渡所得税と住民税が課税されます。
代償財産で不動産を取得した場合、その履行時点の時価が適用されます。
〈不動産などで代償交付する際の注意点〉
代償分割のつもりで贈与税がかかることも
代償分割が絡む、こんな事案がありました。
長男Aを受取人にし
て死亡保険金3000万円をかけていたお父様が亡くなりました。相
続人は長男Aと長女Bの2人です。
遺産には評価額2000万円の土
地がありました。二人で話し合い、死亡保険金3000万円を長男A
が受け取り、長女Bは土地2000万円を相続するとしました。
その
際、長男Aは代償分割のつもりで長女Bに500万円を支払うとし、
「お互い2500万円ずつだな」と決着しました。
ところがです。
後日、Aが支払った500万円は贈与税の対象とな
り、長女Bに贈与税が課税されました。
そのわけは、Aが父の死亡
保険金の唯一の受取人として指定されていたからでした。
それな
のに、長女Bに500万円を支払ったためです。
この分は贈与とみな
されたのです。
税務のプロが語る
「知っ得話」
注 )死亡保険金は相続税の計算対象になりますが、あくまで「みなし相続財産」
として取り扱われ、相続財産ではありません。保険金については
第3章ー11、第
6章ー7
もご参照下さい。
第3章
分けられない1軒分の土地の相続などでは、複数の相続人の間で
どう引き継ぐか、難題となります。その際、土地をまるごと相続す
る人が、代わりとして他の相続人に自己所有の財産で支払う「代償
分割」という方法があります。2 つの手法があり、有利な方を選ぶこ
とになります。
〈ケース〉
相続人は長男のAと長女のBのみ、相続は法定相続分とす
る。長男Aが相続税評価額 4000 万円の土地を相続し、代償分割で長
女Bに支払う。代償分割時のこの土地の時価は 8000 万円と設定。
分けられない土地は代償分割で対応
代償分割
9
第 1 策 = 代償債務を実際の支払いベースで評価する
第
2
策 = 代償分割対象の資産の時価と相続税評価額との比で評価する
〈協議書に代償内容を明記することが必須〉
相続した長男Aが代わりに相続人長女Bに対し現金2000万円を支払
うことで分割協議が成立した場合。
代償財産(現金2000万円)の額が、代償分割時の時価8000万円を基に
分割協議が決定された場合には、以下のように計算します。
遺産分割協議書には、代償分割の内容を必ず明記することが求めら
れます。また「代償として支払う」ことを明確にしなければなりませ
ん。そうでないと、贈与したことになってしまうおそれがあります。
長男Aの相続資産の課税価格 → 4000万円 ― 2000万円 = 2000万円
長女Bの相続資産の課税価格 → 2000万円
長男Aの課税価格 → 4000万円 ―{2000万円 ×( 4000万円÷
8000万円)}=
3000万円
長女Bの課税価格 → 2000万円 ×( 4000万円 ÷ 8000万円 )
= 1000万円
3
い
ざ
相
続
に
直
面
緊
急
時
の
ノ
ウ
ハ
ウ
と
税
務
対
策