〈ケースの対応策〉 〈精通者とは〉 〈美術年鑑とは〉 〈年鑑と鑑定人の評価は異なる〉 いわゆる美術品の鑑定人のことです。美術商を営んでいる著名人や 各地に存在する美術倶楽部等のことをいいます。彼らに鑑定をしても らって出した金額が評価額ということになります。 美術作家やその作品を掲載している年鑑で、美術年鑑社が発行して います。作品について価格も載っており、参考にすることができま す。同年鑑に記載されている価格とは、保存状態が完璧で、デパート や画廊が顧客に売却する際の参考価格となっています。 通常『美術年鑑 』の記載価格と鑑定人による鑑定価格は大きく異なっ てきます。鑑定の結果、期待していた金額の数十分の一にまで下がっ てしまうことも珍しくありません。美術品の実際の価値は、購入額と はかなり乖離があるものと覚悟しておいた方がよさそうです。 書画骨董の価額は「売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価 する」というように法律で定められています。評価とは具体的には、精 通者の意見、あるいは『美術年鑑』などを参考にするという意味です。 購入時に数十万円程度のものであれば、電化製品や家具と同じ「家財」 として申告しますが、少なくとも『美術年鑑』に載っているような美 術・骨董品は「専門家による鑑定」で評価することになります。 美術品の評価はその作品の絶対的価値ではありません。評価時点の相場 や作品の内容によって付けられた「時価」であって、市場動向によって変動 するものです。加えて美術品には「真贋」という判断項目も存在します。評 価は専門的な知識の要る難しい作業です。 鑑定人に資格はありませんので、依頼先によっては実際の何十倍に も過大評価されて、過大な税負担につながってしまうこともあります。 実績と信頼のおけるところに依頼するのが肝心です。 遺産の分割協議を巡る話し合いで、後回しにされがちなのが美術・ 骨董品です。ずらり並べて、長子から順番に気に入った物を選び取る 分け方もみられます。ところが、中に数百万円もの高価な美術品があ って、後で揉め事になる場合もあります。また売却した際に、その美 術品の相続税未払い分を請求されることもありえます。相続人全員の 納得する形で鑑定評価を実施することが望ましいです。 〈信頼できる鑑定人を選ぶ〉 〈揉め事を避けるには鑑定を〉 〈美術品の評価の難しさ〉 100万円未満は減価償却資産 2015年1月1日以降に購入した美術品等は、1点が100万円未満のもの は、時の経過によりその価値が減少しないことが明らかなものを除き、減価 償却資産となります。 美術品等が100万円以上でも、時の経過によりその 価値が減少することが明らかなものの場合には、減価償却資産に該当しま す。 減価償却資産であれば、その資産の法定耐用年数に渡り毎年償却で きます。 中小企業者等の場合は、30万円未満の減価償却資産は、その年に全額 損金処理できます。 対象資産の取得価額合計は年間300万円が限度です。 税務のプロが語る 「知っ得話」 第2章 〈ケース〉 亡くなった父は日本画など美術・工芸品の収集に凝って いました。遺品整理中に昭和時代の有名な大家の落款のある花鳥画 が出てきました。本物のように見えますが、どのくらいの価値があ るのか見当がつきません。相続税の申告を前にして、どうしたもの やら…。 有名作家の作という名画、どう評価? 美術品や工芸品 17 2