〈売買価格や専門家に依頼して評価〉国税庁の評価通達 〈このケースでの評価方法〉プロの評価や業者の取引価格が参考 国外財産は、国税庁の「財産評価基本通達」により次のように評価し ます。 海外にある財産も、原則日本と同じ方法で評価します。ただし日本 と同様の方法での評価が難しい場合には、市場での売買価格やその分 野に詳しい専門家からの評価を考慮し評価します。それが難しい場合 には、課税上問題がなければ、その財産の取得価額を基にその財産が ある地域や国のその財産と同一種類の財産の一般的な価格動向などを 勘案する修正を行って求めた価額で評価できます。または、課税時期 の後にその財産を売った時は、その売却価額を基に課税時期に立ち戻 った価額を算出し直すと、その額で評価できます。 具体的には、ハワイの場合には土地の路線価や公示価格はないの で、現地の不動産会社へ査定を依頼し実勢価格を探るか、海外の物件 にも詳しい不動産鑑定の専門家に評価を依頼し、相続時の時価を相続 税評価額とします。リゾート会員権は、中古会員権の販売業者による その会員権の取引価格などが参考になります。円への換算レートは取 引金融機関が公表する課税時期の最終の為替相場(対顧客直物電信買 相場)です。そうして算出した評価額に、根拠とした資料を添えて申 告時に提示することが求められます。 相続税算出に際して土地の評価の基準となる路線価及び倍率は日本固有 の指標ですが、海外にも地価の公示制度に基づく価格がある国もあります。 例えば、韓国では「不動産価格公示及び鑑定評価に関する法律」が定められ、 標準地公示価格が公示されています。こういった海外の公示地価も海外の 土地評価に利用できます。また、「小規模宅地等の特例」の軽減措置は海外 不動産でも適用できます。 〈海外の土地の地価の公示制度や小規模宅地等の特例〉 海外資産のチェックは厳格化へ 国外に5000万円超の財産を持つ人を対象に「国外財産調書」と 「国外財産調書合計表」の提出が義務付けられ、2014年から提出 が始まりました。 12月31日時点で5000万円超ならば、翌年3月15日 までに提出しなければなりません。 違反すると罰則が科されます。 国外の財産への監視は厳しくなる一方です。 海外で不動産や会員権を購入するのであれば、自分や家族が楽 しんだり、仕事や通学の際の生活拠点として活用したりするのを目 的にするのが妥当でしょう。 相続税の節税目的には、為替も関係し 対策が立てにくいです。 投資と考えるならば、資産価値の上昇が期 待できることや、国内財産をリスクヘッジのために海外に移すとい った熟慮が肝要です。 将来の相続に向け、相続人の負担にも配慮 して準備しておくことを薦めます。 税務のプロが語る 「知っ得話」 〈ケース〉 ハワイ・ホノルルに部屋の占有面積 120㎡のコンドミニア ムを所有しています。相続時の評価はどうたらいいでしょうか。 第2章 ビジネスや旅行で海外経験が当たり前の時代となり、国外でマン ションや邸宅、別荘、リゾート会員権を所有する人も増えています。 こうした海外の不動産やそれに準じる資産も、相続の際には課税対 象となります( 第1章―7 参照)。どのように評価するのか、その指 針を以下に概説します。 海外の別荘は現地の時価で評価 国外に所有するリゾート物件 16 2