1. 地主が建物を建てて自分で経営 → 通常の評価 2. 地主が建物を建てて土地と共に貸している → 貸家建付地として減額評価 3. 地主が土地だけを貸し、借り主が建物を所有 → 貸宅地として減額評価 〈ケースの概要〉冒頭のケースは上記 3 の貸宅地に当たります 敷地面積 200坪(=660㎡)、 路線価 18万円 借地権割合 60%、 借家権割合 30%、 相続人は子1人と想定 所有している土地の上に店舗が建ち、営業している場合は、その建 物の所有者や営業している人によって土地の評価方法が以下のように 異なります。 土地、建物、経営のすべてが同じ人の所有・経営となっている際に は、自由に処分・利用できるので自用地として評価され、通常の路線 価方式または倍率方式で評価された価額がそのまま評価額になりま す。ただし相続人が店の経営を引き継ぐ場合には、通常「小規模宅地等 の特例」が適用できます。 土地、建物の所有者と、経営者が異なるときは、貸家建付地として 評価します。貸家建付地は自用地評価と違い、建物を賃借している人 の権利相当額の借地権や借家権、賃貸割合等を計算に含めて減額する ことができます。 所有する土地を貸し付け、借りた人が店舗等を建築して営業をして いる際は貸宅地となり、借地人の権利相当部分(借地権)を減額して評 価します。 ほかに不動産や金融資産などがなく、相続は土地のみと仮定します。 基礎控除額を相続人 1 人で 3600 万円と仮定します。相続税率は 1000 万円超 ~ 3000 万円以下では 15%、控除は 50 万円。 自用地評価額 ×( 1 - 借地権割合 60% ) この土地に「小規模宅地等の特例」が適用された際は減額されます。 当該ケースでは「貸付事業用の宅地等200㎡まで50%減額」が適用でき、 土地 660㎡のうち限度まで特例を受けると、720 万円減額されて評価 額総額は 4032 万円となります。相続税率は 1000 万円以下では 10%、 控除はゼロ。 (18万円 × 660㎡)×(1 ― 60%)= 4752万円 → 土地の評価額 (4752万円 ― 3600万円)× 15% - 50万円 =122.8万円 → 相続税額 (4032万円 ― 3600万円)× 10% = 43.2万円 → 相続税額 〈相続税額の計算その1〉小規模宅地特例を活用しない場合 〈相続税額の計算その2〉小規模宅地等への特例活用で減額 〈評価額の計算〉貸宅地の評価は、以下の通りです 同一貸宅地内での多様な事業の扱い 国税不服審判所( 第6章 ワイド版「知っ得話 」その2 参照)の事 例に、貸し付けた土地に借り主がガソリンスタンド、 パチンコ店、 ボウリング場を建てて営業していた際の相続税を巡る案件があり ました。 申告者はこの土地を店ごとに3つに区分し、 各々1区画と して評価して申告しました。税務署は一つの土地として評価すべ きとして更正し、 評価額が上がり相続税も増額されました。 申告者は異議を申し立てましたが、審判所の採決では、事業用 の敷地用に一体として貸し付けられているため、土地全体を1区 画の宅地と判断するのが妥当として棄却しました(1998年6月23 日採決)。 借り主も敷地も同一の際は、複数の建物があっても1区 画とされる可能性が高いと考えられます。 税務のプロが語る 「知っ得話」 第2章 〈ケース〉 私の母は都内郊外の国道沿いに土地を 200 坪所有してい ます。現在はこの土地を知人に貸し付け、知人はそこに店舗を建築し、 飲食店を営んでいます。ずっと先のこととは思いますが、この土地 の相続のことが気になり、ご相談に上がりました。 店やビルの建つ土地の評価の3分類 都内国道沿いの貸地編 11 2