成増駅前の商店街 路線価 1㎡当たり 64 万円(2016 年) 土地の評価額 64万円 × 66㎡ = 4224万円 建物の評価額 = 300万円 → 土地と建物の合計 = 4524万円 4524万円 ― 基礎控除額(3000万円 + 子1人600万円)= 924万円 このままでの相続税 → 924万円 × 税率10% = 92万4000円 → 税額 さらに、お店の設備など事業用の資産や自宅、預貯金などを加えると、 資産全体に課せられる相続税もけっこうな額となるでしょう。若い娘さんに とっては重い負担となるかもしれません。 お店の土地は事業用地なので「小規模宅地等の評価減の特例」( 第1 章ー2 参照)を有効活用することにより、相続税を抑えられます。 〈このケースでの対応策〉 娘さんが店を引き継げば税は軽減される ・店舗敷地面積 20坪(66㎡)、このケースでは自宅は考慮しない ・建物の固定資産税評価額 300万円 ・相続人 子1人(成人の娘) 店舗敷地が「小規模宅地等の評価減の特例」の中の特定事業用宅地等 の要件に該当すると、400㎡まで土地の評価を 80%減額することがで きます。このケースでは 66㎡の敷地のすべてが枠内に収まります。 特定事業用宅地等については、以下の要件が必要となります。 申告期限である 10 カ月を超えた際は、やむなく廃業したり、売却し たりしても、この特例が取り消されることはありません。 左頁のケースの土地の評価額と課税額 ー 上記特例の要件に該当した場合 事業承継要件 ー 事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、 かつその申告期限までその事業を営んでいること 保有継続要件 ー その宅地等を相続税の申告期限まで保有していること 土地の評価額 4224万円 ×( 1 - 80% )= 844万8000円 建物の評価額 = 300万円 → 土地と建物の合計 = 1144万8000円 これは基礎控除額3600万円より低いので課税されなくなります 〈特定事業用宅地等として特例を活用〉 共同経営の店では相続は細分化される 商店では友人などと共同で経営することも多いです。 そんな場 合、もしも共同経営者の1人が亡くなった際、配偶者や子などの相 続人は店の土地や資産のうち、その人の持分を相続します。 各相 続人がその資産を分割した際には、上記の評価減の特例は、要件 に当てはまる相続人だけに適用されます。 資産が細分化され、協議 も難しくなりがちです。 税務のプロが語る 「知っ得話」 第2章 個人商店の相続では、子や孫が営業を引き継ぐ際には 80%の評価 減が受けられます。駅前の一等地に構えている店などでは、この優 遇税策が大いに役立つはずです。商店街でシャッターの閉まったま まの店が増えている一因に相続問題があります。零細商店を後押し する税制ともいえます。 〈ケース〉 東京・成増の駅前の商店街で人気の飲食店。父が亡くなっ た後も母が営業を続けています。会社員の娘さんが 1人いて、夜間や 休みの日などに店を手伝っています。母も歳をとって大変そうなので、 ここらで会社を辞めて本格的に店を継ごうと考え始めています。 先行きの相続を仮定し、以下の設定でどうなるかを計算してみま しょう。 商店の相続、引き継ぐと税優遇 都市郊外の店舗編(成増の事例) 5 2