〈ケースの詳細〉 このケースで相続税がどのくらいになるか、ざっと計算してみましょう。 世田谷で典型的な住宅地の路線価を調べてみました。2013年は 1㎡当た り54 万円、14 年は 55 万円、15 年は 56 万円、16 年は 58 万円と、年々 上昇しています。 土地 330㎡(100坪)、路線価1㎡当たり 60万円と設定 土地評価額 330 × 60万円 = 1億9800万円 建物 固定資産税評価額 600万円と設定 相続人は子1人 ほかに現金などの資産や借金はないと仮定します。 マンションを売却して世田谷の実家へ引っ越し、母と暮らすことと しましょう。同居となれば、小規模宅地の特例により 330㎡まで 80% の評価軽減が適用されます。 土地1億9800万円 + 建物600万円 = 2億400万円 2億400万円 - 基礎控除額(3000万円 + 相続人は子1人で600万円) = 1億6800万円 1億円超 ~ 2億円以下の相続税率は40%、控除は1700万円 1億6800万円 × 税率40% - 控除1700万円 = 5020万円 → 納税額 1億9800万円 ×(1 - 特例による評価減 80%)= 3960万円 3960万円 + 600万円 - 基礎控除(3000万円 + 600万円)= 960万円 1000万円以下の相続税率は 10% 960万円 × 税率10% = 96万円 → 納税額 2. 母と同居するという対策 小規模宅地特例で評価を軽減できる 上記1と対策後の2を比べると、税額は以下のように96万円に激減 1. 相続対策なしの場合の納税額 以下の計算で税額は 5 千万円に 相続後での売却は申告期限後が条件 このケースで、たとえば家が古過ぎ、相続後には売却して引っ越 したいとする場合が考えられます。 申告期限まではその家に住み 続けるのが条件なので、亡くなった日から10カ月を過ぎて売却する のが望ましいです。 地価が取得時から値上がりしていた際には、譲 渡所得税が課せられることもあります。 親に取得時の金額を確か めておくのは重要です。 それとは別に、同居していた親が自宅から所有権付きの老人ホ ームへ移り、そこで亡くなる場合もあります。 相続時には同居となり ませんが、一定の要件を満たす場合には、小規模宅地の特例が受 けられます。 税務のプロが語る 「知っ得話」 第2章 〈ケース〉 Aさんの母は見かけも上品な老婦人で、東京・世田谷の 閑静な住宅地に自宅を構えて住んでいます。土地は100坪で、建物 は古いが広いです。すでに夫は他界しています。1 人娘の A さんは持 ち家マンションに家族で暮らしていますが、最近は世田谷の実家へ 通って母の世話をする毎日です。先々の相続を考え、母と暮らすの も一案かと迷っています。 高級住宅地の邸宅は税も重い 閑静な住宅地編(世田谷の事例) 4 2