〈ポイントは住所、国籍、財産が国内か海外か〉 〈子に日本国籍あり、親・子が10年以内に住所なしで海外財産課税なし〉 〈子に日本住所ありで国内・海外全財産に課税〉 一時在住は例外 このケースでは、財産をもらい受ける人(子のAさん・相続人)と財産を あげる人(父親・被相続人)が、① 相続時に日本に住所があるか又は10 年以内に日本に住所が有ったか ②それは一時的なものか ③国籍は日本 か ④その財産は国内財産か海外財産か ーにより相続税がかかるか否か が決まってきます。 財産をもらい受ける人が日本国籍を持つ時は、財産をもらう側の人と譲 る側の人が共に相続以前 10 年(改正前は5 年)以内に日本に住所がない 場合に限り、海外財産に相続税は課税されません。ただし「国外転出時 課税の納税猶予の特例」適用時は課税もあり得ます。国内財産は課税さ れます。 日本に住所がある人が財産を相続する場合には、原則として国内の全 ての財産と海外の全ての財産に日本の相続税がかかります。 2017 年 4 月 1 日以降は、外国の方が日本でビジネスをする際の障害 を除くため次の措置が講じられます。日本国籍を持たない外国から来た経 営者など(注1)、日本に一時的(注2)に住所を置く人の海外財産には相 続税が課税されなくなりました。ただし、財産を譲る人も日本国籍をもた ず海外在住か一時的に日本に住所を置いていただけの場合です。 国内財産を相続する場合には、一時的に住所を置く人も課税されます。 日本の心地よさか、節税か 資産家のAさんは、3年前に相続税対策で住所を海外に移し、年 に半年以上は海外で暮らしています。 最近、日本滞在中に資産家 仲間の会合に出席しました。 そこで「海外財産課税なしの要件が海 外在住10年超に改正される」ことを知らされ、がっかりしました。 住した当初は気分も高揚していました。 しかし最近は、知り合いも 少なく、食事や気候、医療状況などに違和感が募り、なるべく日本に 居たいとの思いが高まっています。 奥さんも元気がなくなってきた そうです。 ずっと移住生活を頑張り続けるかどうか、悩んでいます。 税務のプロが語る 「知っ得話」 財産をもらい受ける人に日本国籍がなく、財産を譲る人が相続以前 10 年(改正前は 5 年)以内に日本に住所がない場合には、海外財産に相 続税は課税されません。財産を譲る人が日本国籍を持たず、相続時や それ以前10年以内に日本に住所があった場合でも、それが一時的(注2) な場合には、2017 年 4 月 1 日以降は海外財産に課税されません。どち らの場合も、国内財産は課税されます。 相続または遺贈により国内財産をもらった人は、日本国籍や国内住 所の有無に係わらず、取得した国内財産全てに相続税が課税されます。 相続時精算課税制度により贈与を受けた財産については、全て相続 税が課税されます。 〈子に日本国籍なし、親が10年以内に住所なしで海外財産課税なし〉 〈国内財産、相続時精算課税財産は全て課税〉 国籍、住所問わず (注1)出入国管理及び難民認定法別表第一の在留資格者 (注2)国内に住所のある期間が、相続開始前15 年以内で合計10 年以下 第1章 〈ケース〉 Aさんは、香港で父の不動産事業を継ぎ、年間半分以上 は香港のマンション暮らしです。日本に居る高齢の父が衰えて入院 しました。香港には父の財産もあります。先々の相続のこと、どう なるのでしょうか。 香港で年の半分を暮らす人の相続 海外在住者・海外の財産(2017年度税制改正対応) 7 1