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労 務


  
在職老齢年金の受給額は多く、社会保険料負担は軽く

            −年金改革とその対応について−

                  税経管理第3部 部長 宇野澤雅男


 今回の年金改革関連法案の骨子は、@厚生年金の保険料率を2004年10月から

毎年0.354%ずつ引き上げ、2017年以降は年収の18.3%(労使折半)で固定する。

A厚生年金モデル世帯(40年加入、妻は専業主婦)の給付水準は現役世代の平均

的所得の50%以上を確保する。B一定以上の賃金がある70才以上の年金額を減額

する。というものです。

 そこで、次の2点について有効な方法を考えてみました。

[T]60才からの在職老齢年金を少しでも多く受給する方法。

 60才以後老齢厚生年金の受給権のある方が、厚生年金被保険者として就労す

る場合、年金の一部または全部が支給停止されます。

 現在(16年4月より適用)の在職老齢年金の計算方法を示します。

総報酬月額相当額=標準報酬月額+その月以前の1年間の標準賞与額の総額÷12
              (賞与の千円未満を切り捨てた額(上限150.万円))
65才未満の基本月額=加給年金を除いた老齢厚生年金の年金額の8割の額を12で
          除した額
65才以後の基本月額=加給年金を除いた老齢厚生年金の年金額を12で除した額

(1) 65才までの在職老齢年金(支給停止額)の計算

 @ まず年金額の20%が支給停止されます。

   年金月額×20%

 A 残りの80%の年金月額(基本月額)と総報酬月額相当額との合計額が28

  万円を超えるときは、@の20%の支給停止に加えてさらに次の額が支給停

  止されます。

基本月額 総報酬月額相当額 支給停止される年金月額
28万円以下 48万円以下 (基本月額+総報酬月額相当額−28万円)×1/2
48万円超 (48万円+基本月額−28万円)×1/2+(総報酬
月額相当額−48万円)
28万円超 48万円以下 総報酬月額相当額×1/2
48万円超 48万円×1/2+(総報酬月額相当額−48万円)

 但し、17年4月より在職老年年金の一律2割支給停止制度が廃止されます。

(2) 65才から70才までの在職老齢年金の計算

 @ 総報酬月額相当額と基本月額(60才台後半は、老齢厚生年金額の12分の

  1額)との合計額が48万円以下のときは、支給停止されません。

    総報酬月額相当額+基本月額≦48万円⇒支給停止ゼロ

 A合計額が48万円を超えるときは、超えた額の1/2の額が支給停止されます。

  支給停止される年金月額⇒(総報酬月額相当額+基本月額−48万円)×1/2

 受給できる年金額を少しでも多くする方法として、次のことを検討してみます。

1,上記の計算より、支給停止額を少なくしても、手取額があまり減らないよう

  な賃金を考える。この場合、高年齢雇用継続基本給付金も考慮する。

2,社会保険からの適用除外者になる。この場合には年金を全額受給できます。 

 @ 常勤の役員から非常勤役員になる。非常勤役員は保険者とならない。

 Aパートタイマーになる。

  パートタイマーで1日6時間未満又は1ケ月に16日未満勤務する。

  (労働時間又は日数が正社員の4分の3未満となること。)

[U]社会保険料負担(健康保険料と厚生年金保険料)を軽減する方法。

1,入社日は月初、退職日は月末の前日にする。

(例)3月25日入社、6月30日退社の場合 社会保険料負担3.4.5.6月(4ヶ月)

   4月1日入社、6月29日退社の場合   〃     4.5月(2ヶ月分)

2.賞与を12分割して月給に上乗せする。

  木村会計ニュース2003年5.6月号「総報酬制導入について」を参照して下さ

  い。

3.被保険者になれない人を使用する。

 @ パートタイマーで前記Tの2Aに該当する人

 A 臨時に使用され、日々雇い入れられる人で、1ヶ月を超えない人 

 B    〃    2ヶ月以内の期間を定めて使用される人で、その期間を超え

  ない人

 C 季節的業務に(4か月以内の期間を定めて)使用される人

 D 臨時的事業の事業所に(6か月以内の期間を定めて)使用される人 他

4. 役員について

 @ 常勤の役員を非常勤にする。非常勤役員は適用除外者となる。

 A 役員報酬を別科目で支給し、標準報酬等級を下げる。

  社長に適正な額で地代家賃を支払う。社長等借入金の返済をする。など

5. 「別会社」や「個人経営で適用除外事業所」を活用する。

 以上のようなことが考えられますが、会社負担分は軽減できますが、将来の年

 金受給額は減りますので、税務を含めてよく検討する必要があると思われます。



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