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税 務

               減資関係の実務

                税経管理第7部 部長 鈴木 正美

 会社の経営をしていく場合において、増資を行う事例については経験が

おありになる方が多いと思われます。今回は、昨今の長期化している経済

情勢の悪化によって、課題となってきている会社を存続させるための手段

としての減資を簡潔に紹介しようと思います。

減資とは次に掲げる目的などにより行われます

 1. 事業規模を縮小等するため株主に会社財産を返却する。

 2. 欠損金のある会社が、欠損金を補填する。(利益配当を可能にする)

 3. 欠損金のある会社が、再建のため減資と増資を組み合わせる。

 4. この他に法人税では、資本金の多寡により取り扱いが異なる場合があ

    ります。資本金一億以下の中小法人には、年間所得800万円までの軽

    減税率、交際費の損金算入限度額の計算などです。また住民税におい

    ては、均等割額が資本金額により段階的に決められておりますので減

    資により区分が下る場合があります。このように減資によって節税を

    図ることが考えられます。 中小法人では、最初から資本金が過大に

    あるとは言えませんので、減資が可能な会社は数多く存在しませんが、

    住民税区分の最低金額としては1,000万円ですので、1,000万円超の

    資本金を有する会社では、減資の効果が期待できます。

減資の種類としては次に区分出来ます

 1. 会社の財産が減少する実質的な減資(有償減資)

 2. 会社の財産が減少しない形式的な減資(無償減資)

   一般的には、株主に対して財産の払い戻しを行わない無償減資が、欠

   損会社の再建を図る目的で行われる事が多いようです。

減資の方法としては以下の方法があります

 1. 額面金額を減少する方法

 2. 株式の併合による方法

 3. 株式を消却する方法

 4. 資本金のみを減少する方法

   なお、株式の消却のうち、配当可能利益及び法定準備金によって行う

   場合は減資にはつながりません。

減資の手続き

  減資は株主及び会社債権者に多大な影響を与えることから、厳格な手続

 きが要求されています。

 1. 株主総会の特別決議

   発行済株式総数の過半数を有する株主が出席し、その議決権の3

   分の2以上の多数決をもってのみ決定する事が出来るもの。

    この株主総会において具体的な減資方法のすべての決議を行うこ

   とが必要です。また、減資株主総会に係る招集通知、公告も具体的

   な議案内容の記載をしなければならないとされています。

 2. 債権者保護手続き

   減資の総会決議から、2週間以内に債権者に対して、1月以上の

   異議申し出期間を定め、官報等で公告しなければならないとされて

   います。このほか、会社は知れたる債権者には、各別に異議申し出

   に係る催告を減資総会決議から2週間以内にしなければなりません。

   異議の申し出があるときは履行期の到来した債務は弁済を、未到来

   の債務には担保提供等をしなければならないとされています。

3. 資本変更登記

   減資の手続き終了後、2週間以内に資本変更登記申請をします、登

   記を怠ると100万円以下の科料に処せられることになります。

減資の税務

 1.減資会社の場合、有償減資では、減少する資本の金額と払い戻し額

   の差額により、減資差益又は減資差損が発生しますが、資本等取引

   に該当し、税法上益金、損金に算入しません。無償減資では減資差

   益が発生しますが、同様に益金に算入しません。

 2.法人株主の場合、帳簿価額を超えた払い戻しは、有価証券譲渡益と

   認識されます。このうち、減資会社の利益積立金額から成る部分の

   金額はみなし受取配当金とされ、益金不算入の対象とされます。

 3.個人株主の場合は、有償減資の交付金等が一定の場合、配当とみな

   され、また交付金等と減資会社の資本等の金額いずれか低い金額が、

   個人株主の取得価額を超える場合、有価証券の譲渡所得になります。



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