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登 記

            
【決算公告】について

                   税経管理第8部 部長 林 克己

 皆さんは決算公告というのをご存知でしょうか。決算公告については、商法に

次のように規定されています。この決算公告についての規定は、平成14年4月

1日施行分から一部改正がありましたので、紹介します。


決算公告に関する商法等の規定

1.公告の義務
 株式会社は、「定時総会の承認後遅滞なく、貸借対照表又はその要旨を公告し

なければならない」と商法に定められています。

 資本金5億円又は負債合計200億円以上の会社は、損益計算書の公告も義務

づけられています。(商法特例法第16条第2項)

2.公告の時期及び方法

 株主総会の翌日以降に定款所定の方法に従って公告することになっています。

3.罰則規定

 公告を怠り又は不正の公告をした場合には、行政罰として「100万円以下の

過料に処す」と定められています。(商法第498条第1項第2号、商法特例法

第30条第1項第9号)

改正法でどこが変わったか

 従来は会社が定めている公告方法により、官報や日刊新聞紙に掲載する事しか

認められていませんでした。掲載には費用がかかるため公告を怠る会社が少なく

ありませんでした。また、公告しても、官報や日刊新聞紙に掲載されるため、後

日その公告にアクセスすることが困難であり、その実効性が疑問視されていまし

た。より実効性が高くかつコストのかからない公開方法として、ホームページで

の掲載が認められるようになりました。


 ただ、コストは抑えられるものの、このホームページを公開する場合には、取

締役会の決議が必要です。また、従来の公告では、「貸借対照表またはその要旨」

が公告内容でしたが、ホームページ公開の場合は、「貸借対照表に記載または記

録された情報」となっていますから、要旨では足りません。さらに、株主総会承

認の日から5年間継続して公開する必要がある点に注意が必要です。(商283D、

商特16B)。    

決算公告のホームページ公開に関する手続

 官報や日刊新聞紙に掲載せず、ホームページ上で公開する場合には、貸借対照

表等の情報を開示するインターネット上のウェブサイトのアドレスを取締役会決

議によって定める必要があります。そのアドレスが登記事項になっています(商

188AX)。登記は、取締役会の決議の効力が生じたとき(登記事項が生じた

とき)から、本店においては2週間、支店においては3週間以内に登記をするこ

ととされています。(商188B・67)。

 *ブック庁では「その他の事項欄」、*コンピュータ庁では「商号区欄」に記

載されます。

 *ブック庁

   従来の紙の登記簿を備えている法務局

 *コンピュータ庁

   磁気ディスク登記簿を備えている法務局。コンピュータ庁においてはブッ

  ク庁のような閲覧を行う事が出来ないので、閲覧に代えて、登記簿に記録し

  た事項の概要を記載した書面の交付制度が設けられています。これが登記事

  項要約書です。
 
【OCR記載例】

「貸借対照表に係る情報の提供を受けるために必要な事項」
http://www.it.co.jp
「原因年月日」平成15年5月1日設定



官報掲載の場合とホームページ上で公開した場合の費用比較


 決算公告の掲載を官報販売所へ依頼した場合、資本金1億円以下の小会社の場

合、2枠で59,126円が必要になります。3枠の場合は88,689円が必要になります。

枠組公告は、1ページ(A4判)を24枠(4段×6枠)としてあります。1枠の

大きさは、2.9cm×6.1cmです。料金は普通ページ1枠につき29,563円(税込)、

ページ指定の場合は、39,567円(税込)です。

 また、ホームページ上で公開した場合には、アドレスを登記する必要があり、

その際に登録免許税が3万円必要になります。その他に、この申請書類作成を外

部に委託した際の費用が必要となります。アドレス登記につきましては、一度済

ませれば良いので後は、貸借対照表に記載または記録された情報をホームページ

上で公開するのみで足ります。自社でホームページをもっていれば、費用はかか

らなので、決算公告の掲載を官報販売所へ依頼するよりも費用を抑える事が出来

ます。ただし、前述のように5年間継続しての公開が必要です。


 現在では、会社の決算公告についてのみ、インターネットのホームページ上で

の公告が認められています。平成15年の秋の臨時国会では、「会社公告の電子

化」等の商法改正案が国会に提出され審議される予定となっています。

 まもなく、決算公告のみならず、*会社公告もインターネットで出来るように

なると思われます。


 *会社公告

 会社公告の代表的なものとしては、商法などに基づく組織変更公告、資本減少公

 告、解散公告などがあります。また、官報公告は下記アドレスにアクセスすれば、

 閲覧する事が可能です。

  http://www.gov-book.or.jp/kanpou/


 尚、有限会社には、株式会社のような決算公告をする義務はありません。これ

は、有限会社の非公開性を考慮して開示手続を緩和したものです。


 参考例:この公告は2枠で59,126円です。 

    第 ○ 期 決 算 広 告

平成○年○月○日
○○都○○区○○町○丁目○番○号
          株式会社○○○○○
          代表取締役社長 ○○○○

       貸借対照表の要旨
科  目 金  額
資の
産部
流動資産      
固定資産
     734,151
96,063
合 計 830,214
負資
債本
及の
び部
流動負債
固定負債
資本金
法定準備金
剰余金
(うち当期利益)
416,136
17,109
10,000
1,250
385,719
(20,433)
合 計 830,214


※2003年4月1日施行の商法施行規則附則第3条に基づき本年度の3月決算期

の会社から剰余金の処分について、「資本剰余金」 「利益剰余金」の区分が必要と

なります。


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