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7・8 −神戸連続児童殺傷事件・大阪教育大附属池田小事件に思う−

July・August 97年5月の「神戸連続児童殺傷事件」より6年、2001年

6月8日の「附属池田小学校児童殺傷事件」より2年が経ちました。前者の

被告、当時14歳の少年Aは、今年中にも医療少年院を仮退院する見通しで

す。現行法では、16歳未満は何をしても刑事責任は問われません(少年法

20条但書)。後者の宅間被告は、今年5月22日、検察より死刑求刑、6月

26日最終弁論、8月中にも判決が言い渡されます。


 神戸事件については、遺族からの民事訴訟も、被告側が原告の主張を全て

受け入れ、全面和解につき、ついに事件の真相は解らずじまいでした。少年

Aの冤罪説など、不明な議論が出てくるのもこの点からかと思います。

 79年、大阪市住吉区の三菱銀行北畠支店の強盗殺人事件では、犯人梅川

は銀行員や、警官を次々と射殺、行員3人に片耳を切り落とさせるなどの猟

奇的な事件を引き起こしました。梅川は、15歳の時に殺人事件を起こし、

再犯の可能性が指摘されながらも、たった1年5か月で少年院を退院、それ

から14年後、今回の強盗殺人事件を起こしました。

 FBI捜査官ロバート・K・レスラーの著書を読むと、猟奇殺人事件の犯

人は更生することなく、何度も同じ罪を重ねる傾向があるといいます。その

伝でいくと、少年Aの再犯の可能性が危ぶまれます。重犯罪の多い国、米国

では、いたずらで赤ん坊を殺害した5歳児が判断能力ありとされ、無期懲役

刑が下されたと聞きます。要は重大な罪を犯したものの人権の保護をとるか、

一般の善良な市民の人権を大事にするかです。善良な市民の人権優先が当然

です。

 米国カリフォルニア州の女性が、神戸事件の特集のweb

http://village.infoweb.ne.jp/~child/kobe15.htmで述べていたことは、

彼我の差を感じさせます。

 「先日のこちらのTVでは、14歳の殺人者のインタビューがありました。

画面にしっかりと出て何故殺したのか、今、精神療法を受けていて果たして

5年後に自分は元の人間になれると思うか等、自分の意見をのべていました。

その男の子の妹の学校の帰りの姿もTVにはっきりと出ていました。声もそ

のままです。

 現実のままのインタビューを観る私達は、これではじめて何が起こってこ

れから何が問題となるのか考えることが出来ます。自分の子供を何から守ら

なければならないのか、どうすれば守ることが出来るのか考えられるのです。

殺人を犯した少年は正常ではないのですから、病気と捉えれば、そのような

病気にかからないようにうつらないようにするにはどうすれば良いのかみん

なで考えねばならないのです。どんな病気なのか、どこに菌があるのか、誰

もが知る権利があると私は思います。単なる興味ではなくて、知って考えね

ばならないからです。日本では少年法で未成年である加害者の保護が強く出

されているようですが、被害者となるほうは保護されないのでしょうか。加

害者を責めたり、その家族に対してどうのではなくて、これはみんなの考え

るべき問題ではないのでしょうか。私の知る限り米国ではたとえ10代でも、

重犯罪者は実名で出されているようです。」

 法で守るべきは、善良な市民です。少年犯罪については、そのための適切

な方式が、まだ日本にはありません。


 神戸事件の経過を見ると、97年2月10日 小学6年の女児が鈍器で頭

部を殴られた。3月9日 5歳の女児が団地の階段から突き落とされる。3

月16日 金槌で頭部を3回殴られた女児が脳挫傷で死亡。ナイフで腹部を

刺された女児が全治2週間。5月24日 男児(11歳)が殺害される。6月

29日 少年A、任意同行に応じ犯行を自供。

 事件の記事を調べていく内に、ハンマーで殴られた女児の父兄が、友が丘

中学校に対し、同校制服を着ていた生徒に殴られた旨、同校に訴えたにもか

かわらず、学校側が何もしなかった事に驚きました。ここで、きちっと犯行

者を押さえておけば、その後犠牲となる2名の尊い命は救われたのではと思

えます。学校特有の事なかれ主義を感じます。異変に対してあまりに鈍感で

す。予知力が欠落しています。

 附属池田小事件では、京都市立日野小で99年、小2の男児が外部から侵

入した不審者に校内で殺害された事件が、全く教訓として生かされていませ

んでした。こういった不備から文部省は、被害者遺族に謝罪し、その意向を

全面的に取り入れた合意書に調印しました。

 文部科学省、友が丘中学校、付属池田小のトップは、児童生徒を守るとい

う最重要な課題に対し、異変や予兆があったときに、もっと敏感に、もっと

迅速に対応すべきだった。異変や予兆に対する敏感な対応は、あらゆる組織

のトップに問われる資質かと思われます。


 高校中退後入った自衛隊で、宅間被告が銃剣の訓練を受けていたのを知っ

て、短時間の犯行に係わらず8名の児童死亡、教諭2人を含む15人が重軽

傷を負うという大惨事が一部理解できました。同時に、自衛隊の入隊資格審

査に疑問を感じました。

 附属池田小で事件途中に教員が110番し、警察に8分も電話していた事

実は、解明し、安全性のほころびを繕うべきでしょう。


 附属池田小事件でお亡くなりになった児童の一人、酒井麻希ちゃんは、「包

丁で四か所を刺されながら、廊下を約五十メートルも走って懸命に生きよう

とした。」との記事を読むと、死は避け得ない人間の条件だからこそ、この

世で一番大切な生きるということを奪う行為の非道、子供の命を守る大人の、

また、親としての責任を強く思います。          2003.06.24



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