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税 務
平成15年度税制改正のポイント
税経管理第8課 松村 恭男
今回の改正は、「研究開発・設備投資減税」、「中小企業向け減税」、「相続税・贈 与税の一体化措置」、「金融・証券税制の軽減・簡素化」、「土地流通税(登録免許税・ 不動産取得税等)減税」等といった、経済活性化(デフレ不況の脱却)につながる 改正を盛り込む一方、「配偶者特別控除の一部廃止」や、「消費税の特例措置の引下 げ」等といった、注目すべき増税項目もあります。以下に、今回の主な改正内容と その適用時期をまとめてみました。 |
T法人関連税制 U中小企業税制 V相続税・贈与税 W金融・証券税制
X土地税制 Y個人所得税 Z消費税 [その他
T. 法人関連税制(産業の競争力強化)
1.研究開発減税
改正内容 | @試験研究費の総額に対する特別税額控除制度の創設。 |
A中小企業技術基盤強化税制の拡充。 | |
適用次期 | 平成15年1月1日以後に開始する事業年度で、かつ、平成15年4 月1日以後に終了する事業年度(3年間の時限措置)について適用。 |
2.設備投資減税
@IT投資促進税制の創設
改正内容 | 平成15年1月1日から平成18年3月31日までに一定のIT関連 設備を取得し、国内事業に供した場合、取得原価の10%の税額控除、 または、取得価額の50%特別償却を選択適用可。 (当期の法人税額の20%が上限で、限度超過額は1年間の繰越) |
一定のリース資産を賃借・事業に供した場合、リース費用の総額の60% 相当額について10%の税額控除が適用。 (当期の法人税額の20%が上限で、限度超過額は1年間の繰越) |
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適用次期 | 平成15年4月1日以後に終了する事業年度について適用。 同日前に終了する事業年度において平成15年1月1日から平成15年 3月31日までの間に対象設備等を取得した場合は、平成15年4月1日 を含む事業年度において、税額控除相当額、特別償却相当額の繰越控除 又は償却が認められる。 |
A開発研究用設備の特別償却
改正内容 | 平成15年1月1日から平成18年3月31日までに取得価額280万円 以上の開発研究用設備を取得し、国内事業に供した場合、取得価額の 50%の特別償却可。 |
適用次期 | 平成15年4月1日以後に終了する事業年度について適用。 同日前に終了する事業年度において平成15年1月1日から平成15年 3月31日までの間に対象設備等を取得した場合は、平成15年4月1日 を含む事業年度において、税額控除相当額、特別償却相当額の繰越控除 又は償却が認められる。 |
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U.中小企業税制 (中小企業・ベンチャー企業支援)
1.同族会社の留保金課税の軽減
改正内容 | 自己資本比率(同族関係者からの借入金は自己資本に含める)が 50%以下の中小企業(資本金1億円以下の中小企業)に対する 留保金課税を停止。 |
適用次期 | 平成15年4月1日から平成18年3月31日までの間に開始する 事業年度について適用。 |
2.交際費等の損金不算入制度
改正内容 | 交際費等の損金不算入制度について、400万円の定額控除を認める対象 法人を資本金1億円以下の中小企業(現行資本金5, 000万円以下の中小 企業)に拡充するとともに、定額控除額までの金額の損金不算入割合を 20%から10%に緩和。 |
適用次期 | 平成15年4月1日から平成18年3月31日の間に開始する事業年度に ついて適用。 |
3.中小企業等の少額減価償却資産の即時償却制度
改正内容 | 中小企業等(資本金1億円以下等の中小法人、従業員数1,000人以下 の個人事業者等)が30万円未満の減価償却資産の取得をした場合には、 全額損金算入(即時償却)。(現行10万円未満) ただし、固定資産税においては、従来通り、10万円以上の減価償却資産 として、課税対象になる可能性大。 |
適用次期 | 平成15年4月1日から平成18年3月31日までの間に取得した資産について 適用。 |
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V.相続税・贈与税 (次世代への資産移転の円滑化)
1.相続時精算課税制度の創設(恒久的な制度)
改正内容 | 65歳以上の親から20歳以上の子(推定相続人・代襲相続人)への 贈与について、選択制により、贈与時に軽減された贈与税を納付し、 相続時に相続税で精算する一体化措置(贈与時の非課税枠2,500 万円、非課税枠を超える部分については贈与税20%で計算)を創設。 |
適用時期 | この制度の選択を行おうとする受贈者(子)は、その最初の贈与を受け た年の翌年2月1日から3月15日までの間に所轄税務署長に対して その旨の届出書を贈与税の申告書に添付します。 |
注意 | 一度、相続時精算課税制度を選択すると相続時まで継続して適用され ます。すなわち、贈与額の基礎控除の年間110万円は使えなくなり、 相続時精算課税制度での贈与財産は、すべて相続税の課税対象になり ますので充分承知しておくべきです。贈与の時点では非課税であった としてもです。ただし、相続時精算課税制度を選択した子が、制度の 贈与者である親以外の者からの贈与を受けた場合には、贈与額の基礎 控除の年間110万円は使えます。 |
贈与税額計算 | 他の贈与財産と区分して、[贈与財産の価額の合計額―2,500万円(複 数年にわたり利用できる非課税枠)]×20%、を申告します。 |
相続税額計算 | それまでの贈与財産と相続財産とを合算して現行と同様の課税方式 (法定相続分による遺産取得課税方式)により計算した相続税額から、 既に支払った「贈与税」相当額を控除します。その際、相続税額から 控除しきれない場合には、「贈与税」相当額の還付を受けることができ ます。 |
適用制限 | 贈与財産の種類、金額、贈与回数には制限はありません。 |
適用時期 | 平成15年1月1日以後の相続または贈与から適用(恒久的) |
<現行の贈与と相続時精算課税制度の相違点>
現行の贈与 | 相続時精算課税制度 | |
税額計算 | (贈与金額―110万円)×累進 税率=税額 |
(贈与金額―2500万円)×20% =税額 |
相続税との関係 | 相続額から切り放し。(相続開始 日から3年以内は加算) |
相続時に合算。ただし、贈与時の 価格で評価されます。 |
受贈者の条件 | 問いません。誰にでも贈与でき ます。 |
65歳以上の親から20歳以上の 子へ。ただし、住宅取得資金は 贈与者の年齢制限はありません。 |
納付 | 単年度課税。(贈与時に完了) | 贈与時に納付し、相続時に精算。 |
相続税の節税 効果 |
あります。贈与税の基礎控除分 (年間110万円)は贈与税がかか らない。将来の相続時に相続税 の計算の対象外となります。 |
ありません。2500万円の非課税 枠はあるが、贈与者の相続時に 相続税の計算に合算されて相続税 がかかります。 |
特徴 | 現行の贈与をしてから新制度を 選択すれば両方の長所をうけら れます。 |
生前に財産を子に渡せます。贈与 者が計画的に対策が打て紛争防止 に役立ちます。 |
2.住宅取得資金等の相続時精算課税制度(時限特例措置)
改正内容 | 相続税精算課税制度について、自己の居住の用に供する一定の家屋 を取得する資金又は自己の居住の用に供する家屋の一定の増改築の ための資金の贈与を受ける場合に限り、65歳未満の親からの贈与につ いても適用することとし、2,500万円の非課税枠に1,000万円を上乗せし、 非課税枠を3,500万円とします。 |
一定の家屋 | 新築又は築後経過年数が20年以内(一定の耐火建築物である場合に は、25年以内)の家屋で床面積が50u以上。 |
一定の増改築 | 増築、改築、大規模の修繕、大規模の模様替等であって、その増改築 の工事費用が100万円以上であること、その増改築後の床面積が50u 以上であることその他の要件を満たすもの。 |
住宅取得資金 等の贈与特例 |
現行の住宅取得資金等の贈与を受けた場合の贈与税額の計算の特例 (5分5乗方式)については、平成17年12月31日まで、経過措置として 存置します。(非課税550万円) |
注意 | 平成15年1月1日以降の贈与について、この経過措置(5分5乗方式) の適用を受けた場合には、その適用年度分以後5年間は上記の相続 時精算課税制度は選択できません。ただし、相続時精算課税制度が 「贈与者である父、母ごとに選択できる」となっていますから次のような 場合は差し支えないといえます。 父親(贈与者)から2000万円(相続時精算課税制度) 母親(贈与者)から1000万円(5分5乗方式) また、平成14年12月31日までに5分5乗方式を利用された方が、 平成15年1月以降相続時精算課税制度を利用されることは問題あり ません。 |
適用時期 | 平成15年1月1日から平成17年12月31日までの3年間の中での贈与 より取得した住宅取得資金等について適用。 |
3.相続税・贈与税の軽減税率
改正内容 | 相続税・贈与税の最高税率が、70%から50%へ引き下げ。 |
税率の刻み数が、9段階から6段階へ(税率区分の拡大)。 | |
適用時期 | 平成15年1月1日以後の相続または贈与から適用。 |
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W.金融・証券税制(「貯蓄から投資へ」の改革)
金融・証券税制の軽減・簡素化
1.一定の上場株式等の配当課税
改正内容 | 配当課税について、20%(所得税15%、個人住民税5%)源泉徴収 で納税が完了する仕組み(申告不要)を導入。 |
適用時期 | 平成15年4月から金額にかかわらず税率20% |
特例 | 平成15年4月から平成20年3月末までは税率10%(所得税7%、 住民税3%)。 |
2.一定の上場株式等の株式投資信託課税
改正内容 | 株式投資信託課税について、20%(所得税15%、個人住民税5%) 源泉徴収で納税が完了する仕組み(申告不要)を導入。 |
適用時期 | 平成16年1月から解約損と株譲渡益の相殺が可能で税率20%。 |
特例 | 平成16年1月から平成20年3月末までは税率10%(所得税7%、 住民税3%)。 |
3.一定の上場株式等の株式譲渡益課税
改正内容 | 株式譲渡益課税について、20%(所得税15%、個人住民税5%)源 泉徴収で納税が完了する仕組み(申告不要)を導入。 |
適用時期 | 平成15年1月から申告分離課税に一本化され税率20%。 |
特例 | 平成15年1月から平成19年12月末までは税率10%(所得税7%、 住民税3%)。 |
上記特例が創設されたことで、現在の制度に見直しが図られました。
現制度の見直し | |
配当課税の見 直し |
・上場株式等の配当所得に係る申告不要の特例の適用上限額の撤廃。 ・株式等に係る配当所得の35%源泉分離選択課税は平成15年3月31 日で廃止。 |
上場株式等に 係る譲渡所得 等の優遇措置 の見直し@ |
「1年超保有株式の100万円特別控除」 変更前;「適用期間が平成13年10月1日から平成17年12月31日 までに譲渡したもの」 変更後;「適用期間が平成13年10月1日から平成14年12月31日 までに譲渡したもの」 →長期(1年超)所有上場株式等に係る譲渡所得等に係る100万円 特別控除の特例を平成14年12月31日までで廃止。 |
上場株式等に 係る譲渡所得 等の優遇措置 の見直しA |
「1年超保有株式の譲渡益の軽減税率」 変更前;「平成15年1月1日から平成17年12月31日までの3年間 に、1年を超えて保有する上場株式を譲渡した場合、税率が10% に軽減される。」 変更後;「平成15年1月1日から平成19年12月31日までの5年間 に1年を超えていなくても保有する上場株式を譲渡した場合、税率 が10%に軽減される。」 →長期(1年超)所有上場株式等に係る譲渡所得等に対する暫定税率 (20%→10%)の特例が廃止。 |
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X.土地税制 (土地の有効利用の促進)
1.登録免許税の軽減
所有権移転 | 現行 | 特例措置 | |
改正内容 | 不動産売買による所有権移転 | 5.0% | 0.1% |
相続・合併による所有権移転 | 0.6% | 0.2% | |
遺贈・贈与による所有権移転 | 0.6% | 1.0% | |
適用時期 | 平成15年4月1日以後に受ける登記について適用。 |
2.不動産取得税の軽減
標準課税 | 現行 | 特例措置 | |
改正内容 | 不動産取得税の標準税率 | 4% | 3% |
適用時期 | 平成15年4月1日から平成18年3月31日までの3年間に限り適用。 |
3.住宅ローン控除
改正内容 | 住宅ローン控除について、住宅ローン控除の適用を受けていた者が、 やむを得ない事由により転居した後、再びその住宅に入居した時に減 税の適用期間が残っていれば、残りの期間の減税が再び受けられま す。 |
適用時期 | 平成15年4月1日以降の転居の場合について適用。 |
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Y.個人所得税(人的控除の簡素化)
☆配偶者特別控除が一部廃止されます。
適用時期 | 平成16年分以後の所得税、平成17年以後の住民税について適用。 |
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Z.消費税(信頼性・透明性の向上)
1.免税点・簡易課税の適用上限引下げ
免税点・簡易課税 | 現行 | 改正後 | |
改正内容 | 事業者免税点制度の適用上限 | 3,000万円 | 1,000万円 |
簡易課税制度の適用上限 | 2億円 | 5,000万円 | |
適用時期 | 平成16年4月1日以後に開始する課税期間について適用。 |
2.中間申告納付
中間申告納付 | 現行 | 改正後 | |
改正内容 | 直前の課税期間の年税額が4,800 万円(地方消費税込6,000万円)超 の事業者の中間申告納付 |
3月ごと | 毎月 |
適用時期 | 平成16年4月1日以後に開始する課税期間について適用。 |
3.取引価格
改正内容 | 消費税額を含めた総額の価格表示の義務付け。 |
適用時期 | 平成16年4月1日から適用。 |
改正内容 | 資本金1億円超の企業に対し、外形標準課税がいよいよ導入。 |
適用時期 | 平成16年4月1日以後に開始する事業年度から適用。 |
改正内容 | 発泡酒・ワインが10円値上げ。 |
適用時期 | 平成15年5月から適用。 |
改正内容 | たばこ1本当たり1円値上げ。 |
適用時期 | 平成15年7月から適用。 |
◎社会保険制度が平成15年4月から大幅に変わります! |
平成15年4月から社会保険料率の算定に"総報酬制"が導入されます。"総報酬制"とは、
賞与にも月給と同率の保険料がかかる制度です。
☆現行の保険料率 | |||||||||
現行 | 厚生年金 | 健康保険 | 介護保険 | ||||||
負担者 | 会社 | 本人 | 合計 | 会社 | 本人 | 合計 | 会社 | 本人 | 合計 |
月給 | 8.675% | 8.675% | 17.35% | 4.25% | 4.25% | 8.5% | 0.535% | 0.535% | 1.07% |
賞与 | 0.5% | 0.5% | 1.0% | 0.5% | 0.3% | 0.8% | − | − | − |
賞与1回 賦課上限 |
なし | なし | − | ||||||
☆総報酬制の保険料率 | |||||||||
総報酬制 | 厚生年金 | 健康保険 | 介護保険 | ||||||
負担者 | 会社 | 本人 | 合計 | 会社 | 本人 | 合計 | 会社 | 本人 | 合計 |
月給 | 6.79% | 6.79% | 13.58% | 4.1% | 4.1% | 8.2% | 0.46% | 0.46% | 0.92% |
賞与 | 6.79% | 6.79% | 13.58% | 4.1% | 4.1% | 8.2% | 0.46% | 0.46% | 0.92% |
賞与1回 賦課上限 |
150万円 (本人保険料101,850円) |
200万円 (本人保険料82,000円) |
200万円 (未定) |
(☆)介護保険料率はH14年10月8日の社会保険庁の試算。平成15年3月に発表されます。
☆総報酬制に伴う事業主の届出の変更
1.賞与等支払届(年3回以下の賞与についての届出)
現行 | 賞与の支給の都度、被保険者の賞与総額を届出 |
改正後 | 賞与の支給の都度、被保険者1人毎の賞与金額を届出 |
2.算定基礎届について
現行 | 算定基礎月 5,6,7月、改定月10月 |
改正後 | 算定基礎月が、4,5,6月、改定月9月 |
◎国民健康保険税の算出方法が平成15年度から改正されます! |
平成15年度から国民健康保険税の算定のための所得控除額が見直されます。
創設 | 専従者給与控除(青色、白色問わず)、長期譲渡所得等特別控除を創設。 |
廃止 | 給与所得特別控除(2万円)、公的年金等特別控除(17万円)を廃止。 |
[専従者給与控除の創設]
現行 | 例えば、事業主、専従者のいる世帯の場合。一世帯の所得として合算され、 事業主に対して基礎控除(33万円)を引いた後、国民健康保険税が課税 されていました。 |
改正後 | 専従者給与から給与所得控除を差し引き、事業主・専従者各一人に対し、 基礎控除を差引き後、国民健康保険税が課税されます。 |
(例)事業主所得200万円専従者給与100万円のケース(青色)
現行 | 改正後 | |
事業所得 | 2,000,000 | 2,000,000 |
専従者給与 | 1,000,000 | 350,000(給与所得控除後) |
計 | 3,000,000 | 2,350,000 |
基礎控除 | 330,000(事業主分) | 660,000(2人分) |
差引 | 2,670,000 | 1,690,000 |
所得割(8%) | 213,600 | 135,200 |
資産割 | 現行と改正後で変更はない予定。 | |
世帯割 | ||
人当割 |
(注)市町村により、税率及び資産割等は異なります。なお、上記の表は地方税法等
法案が通った場合の試算です。
[長期譲渡所得等特別控除の創設]
現行 | 特別控除前の所得に対して、国民健康保険税が課税されていました。 |
改正後 | 特別控除後の所得に対して、国民健康保険税が課税されます。 |
3月18日(火)は、確定申告業務慰労のため、お休みとさせて頂きます。 |