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税 務

             伸びる会社の節税戦略 55
      −総務部門の節税 オーナーの節税対策(24)−

                       所長 木村哲三

           株式公開による節税4

株式公開手順

 前回に引き続き、究極の株式相続対策を考えます。前号では株式公開

の納税資金対策に対する効果を見ました。株式公開により、会社が

自分で資金調達の手段を持つことになります。会社が造幣局を持つこ

とになるとは、よく言われる株式公開の比喩です。

 さて、今回のテーマはその株式公開の手順です。相続税対策に直接

関係はしませんが、公開のハードルを検討するのも、納税資金対策の

一つとして株式の公開を考える際、意味があります。

 会社の種類についてですが、有限会社や合名会社、合資会社は公開

できませんので、株式会社以外の会社は公開を考えたら、まず、株式

会社に組織変更しておきます。


上場・店頭登録とその他の市場

 株式の公開方法として、証券取引所への株式上場と、証券会社の店

頭への株式の店頭登録があることは前号で述べました。上場と店頭登

録では、その受けるメリットの大きさが違います。同様に、公開に当

たってのハードルの高さも違います。上場に比べて、店頭登録は公開

基準が緩くなっています。

 上記2つの市場以外にも、 東証マザーズ、ナスダック・ジャパン、

店頭2号、大阪新市場、米国ナスダックが新たに公開市場として加わり

ました。ディスクロージャーの徹底した透明市場と公開の敷居が低いリ

スクのある市場がツインになっていることが、これらの新市場の特徴で

す。

結果として投資家の自己責任の徹底が原則となります。

 以下では、東証上場と店頭公開を中心に取り上げます。


形式基準と実質基準

 株式公開のために、最低限満たすべき数量的な基準や形式の要件を、

形式基準と呼びます。この要件が一つでも満たされないと、公開申請

そのものができません。言うなれば、公開に当たっての足切り基準と

いえます。

 実質基準は、公開会社が公開に値する実質的な内容を備えた会社で

あるかどうかを審査するための基準です。形式基準と異なり、金額や

数値などの明確な基準で示されるものではありません。


形式基準

形式基準は、重要な順に次の要件があげられます。

1 利益要件

2 資産要件

3 株式要件

4 監査要件

5 その他の要件


1 利益要件

最初に挙げた利益要件は、会社の収益力に対する要件です。この要

件が最も大切なのは、投資家がなにを判断基準に、投資する会社を判

断するかを考えれば明らかです。つまり、投資する会社が儲かる会社

かどうかが、投資の最大のポイントです。そこで、株式公開審査の最

大の項目が収益力となります。

東京証券取引所の利益基準は、上場3年前は2億円以上、上場2年

前は3億円以上、上場直近期は4億円以上となっています。ここでの

利益額は、経常利益または税引き前当期純利益のいずれか低い金額で

す。また、1株当たりの利益金額基準も上場3年前から定められてい

ます。

店頭登録の場合は、利益額を直接定めてはいませんが、1株当たり

の利益金額は定められています。直近期の1株当たり利益が10円以

上とされています。店頭登録の最低発行済み株式数は、50円額面換

算で100万株以上なので、最低利益金額は100万円の10倍で1

000万円と計算されます。ただし、実際に店頭登録した会社の利益

金額は、1000万円を相当上回っています。

                          次号に続く



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