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税  務


              
離婚と税金


                        税経管理第2部 部長 並木


 ワイドショーや週刊誌を賑わす芸能人の離婚。慰謝料も高額になることが多く、

ランキングが作られるほどです。

 厚生労働省の人口動態統計データに1年間の離婚件数が掲載されています。平

成14年の年間29万組をピークに、平成27年は、減少傾向にあるものの年間25.5

万組と高い数値を示しています。離婚による「慰謝料」、「財産分与」、「養育費」等

と税金について書いてみます。


 離婚にかかわる「慰謝料」、「財産分与」、「養育費」等が金銭で支払われる場合は、

原則として当事者双方に税金はかかってきません。例外として、慰謝料等が多額

と認定される場合や相続税免れが明らかである場合は贈与税が課税されます。


 離婚して財産をもらったとき 国税庁 タックスアンサーNo.4414

 離婚により相手方から財産をもらった場合、通常、贈与税がかかることはあり

ません。これは、相手方から贈与を受けたものではなく、夫婦の財産関係の清算

や離婚後の生活保障のための財産分与請求権に基づき給付を受けたものと考え

られるからです。

 ただし、次のいずれかに当てはまる場合には贈与税がかかります。

1 分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他す

べての事情を考慮してもなお多過ぎる場合= この場合は、その多過ぎる部分に

贈与税がかかることになります。

2 離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合=この場合

は、離婚によってもらった財産すべてに贈与税がかかります。

                      (相基通9−8、所基通33−1の4)
 


 財産分与等による家や土地などの不動産の移転に関しては、その不動産を譲り

渡した方に譲渡所得税がかかってきます。違和感を感じるとおもいますが、これは

慰謝料等を不動産を売却して換金清算して渡したと考えるからです。

 譲渡所得税がかかる場合は、収入金額‐(取得費+譲渡費用)‐特別控除額=課

税譲渡所得金額 がプラスになった場合です。マイナスの場合にはかかりません。

 上記の特別控除額は、条件があえば「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円

の特別控除」が使えます。ただし、離婚成立前に財産分与等により居住用不動産を

引継いだ場合、支払の相手が「配偶者」であるため「居住用財産を譲渡した場合の

3,000万円の特別控除」の適用は受けられません。

 離婚成立後に財産分与等により不動産を渡さないと3000万円控除が使えなく

なり高額な所得税がかかるケースがありますので注意が必要です。

 譲り受けた方は、不動産取得税や名義変更時の登録免許税がかかります。


 離婚して土地建物などを渡したとき 国税庁 タックスアンサーNo.3114

 夫婦が離婚したとき、相手方の請求に基づいて一方の人が相手方に財産を渡すこ

とを財産分与といいます。財産分与が土地や建物などで行われたときは、分与した

人に譲渡所得の課税が行われることになります。この場合、分与した時の土地や建

物などの時価が譲渡所得の収入金額となります。

 分与を受けた人は、分与を受けた日にその時の時価で土地や建物を取得したこと

になります。したがって、将来、分与を受けた土地や建物を売った場合には、財産

分与を受けた日を基に、長期譲渡になるか短期譲渡になるかを判定することになり

ます。

                      (所基通33−1の4、33−9、38−6)

 



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