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税  務


                  書面添付制度の活用

           〜税務調査の省略を目指して〜


                        税経管理第8部 部長 角田


 「税務署より税務調査の依頼がありました」何も悪いことはしていなくても、ド

キッとするものです。通常、調査期間は2日間で依頼されますので、大切な時間を

税務調査立会いに費やさなくてはなりません。

 絶対条件ではありませんが、税務調査が省略になることもある「書面添付制度」

を簡単に紹介致します。


<書面添付制度の概要>

 この制度は、税法等の規定ではなく税理士法に規定するものであります。

 税理士が税理士法33条の2に規定する書面(下記参照)を作成し申告書へ添付し

た場合において、税務調査の事前通知をする前に、添付された書面の記載事項に関

し税理士に意見を述べる機会を与えるもの(意見聴取)であります。

 税務当局側も税務の専門家である税理士の立場を尊重し、書面添付制度の趣旨を

踏まえ、税務執行の円滑化や簡素化のため普及・定着を図ると言っています。


<税理士法33条の2に規定する書面の内容>

・自ら(税理士)作成記入した帳簿書類に記載されている事項

  →試算表や決算報告書等を作成する際の根拠帳簿、現金出納帳や領収証控など

・提示を受けた帳簿書類に記載されている事項

  →銀行残高証明書、各契約書、株主総会議事録など

・計算し、整理した事項 (税務調査で行われる確認事項は必ず記載すべきです

  →各勘定科目について、重要事項についてどの書類を参考にしたのかなど

・各勘定科目についての増減要因や、会計処理の変更事項

  →売上が増加した(新規顧客あり)、人件費が増加した(新卒者雇用)など

・相談に応じた事項 など

  →具体的な相談内容と、それに対し確認したことや指導事項など

 この書面の記載事項や確認した書類によって、税務調査が省略される可能性が増

えると言っても良いのかも知れません。調査官による税務調査で行われる確認事項

がこの書面(根拠書類の写しの提出も含めて)で出来れば良いのです。


<書面添付制度の効果>

1. 税務調査の省略や調査期間の短縮もありえる

 前述したように、税務調査の事前通知前に税理士による意見聴取をすることに

なりますが、当局もこの意見聴取の結果を踏まえ実地調査が必要か判断するとあ

ります。(税務調査前の形式的な意見聴取ではない

 結果税務調査が必要ないと認められれば、書面により通知が届きます。

2. 決算の精度が上がる

 書面添付制度を活用するには、税理士による定期的な監査や指導等が必須です。

 結果として高品質な決算申告となり、例え事前意見聴取後に実地調査に移行さ

れても、申告是認(当局から適正な申告と認められる)を受ける可能性は増える

と思われます。

3. 申告書の信頼性が上がる

 根拠資料や各勘定科目の増減に関する理由、また相談事項を記載することで、

税務から経営にわたり税理士が関与している証明となり、第三者からの信頼性、

特に金融機関からの信用が高まる効果が見込まれます。(金利優遇もあり)


<書面添付制度の留意点>
・納税者は、うそ偽りなく税理士に税務・会計に関する情報を開示する

・税理士は、専門家として正しい申告と指導・相談につとめる

・責任の所在は明確に(税理士の虚偽記載は懲戒処分あり)

・粉飾・売上除外などをしている会社はもちろん、帳簿に不備があれば出来ない

・強制調査や無通知調査(現金商売など)の場合は、意見聴取の適用なし

・書面添付は継続的に(前期あり、今期なしは何かあるはずと思われる?)

・書面添付した会社としていない会社の差別化(していない会社は何かある?)


 平成25年事務年度「国税庁実績評価書」(財務省)によりますと、全国の書面添

付割合は8.1%、前年は7.8%とまだまだ低い状況のようです。

 但し、税理士による意見聴取了後に税務調査が省略された割合は、制度が始まっ

た平成13年当初ではわずか4%程度だったものが、最近では約半数にも増加してい

るようです。検討の価値ありですね。

 時間を費やし、精神的にも大きな負担となる税務調査の省略を目指して、「書面添

付制度」
を活用してみませんか。 

 不明点や疑問点などがありましたら担当まで連絡を下さい。



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