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税  務


              贈与税の配偶者控除


                        税経管理第2部 部長 並木


 平成27年1月1日からの相続は、相続税法の改正により、基礎控除が引き下げら

れています。これにより相続税がかかるケースが増え、相続税対策の検討をされて

いる方も多いと思います。相続税対策の一つとして贈与税の配偶者控除を活用する

ことがよく取り上げられていますが、この制度の内容とリスクを検討してみましょ

う。


 贈与税の配偶者控除とは、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は

居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほ

かに最高2000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例です。贈与税は暦年

(1月1日〜12月31日)で計算されますので、1年の間で2110万円までは、居住用不

動産等を贈与されても贈与税がかからないことになります。この特例を使っての相

続税対策とは、配偶者の相続財産を贈与によって減らすことにあります。通常の贈

与での相続開始前3年以内に贈与された財産は、相続財産にプラスして相続税を計

算しますが、この特例を使って贈与された財産は3年以内であっても相続財産に加

算されないこととなっています。


 この贈与税の配偶者控除を受けるための条件は、

 @婚姻期間が20年以上である配偶者からの贈与であること。

  *婚姻期間は、入籍してから贈与をされた日までの期間で計算します。


 A配偶者から贈与された財産が、自分が住むための国内の居住用不動産であるこ

  と。又は居住用不動産を取得するための金銭であること。

  *贈与される居住用不動産は、敷地のみでも可です。借地権も対象となります。

  配偶者との共有名義でも可です。


 B贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不

  動産、又は贈与を受けた金銭で取得した国内の居住用不動産に、贈与を受け

  た者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること。

  *すでに居住している不動産であれば、ほぼ条件に合致しますが、贈与財産が

  不動産購入資金であるときには、注意が必要です。完成後に居住する時期が、

  翌年3月15日までという条件があるからです。完成時期や工期の遅れに注意

  です。


 C過去に配偶者控除を受けていないこと。

  *贈与税の配偶者控除は、同じ配偶者からは一生に一度しか適用を受ける事がで

  きません。


 D贈与税の申告をすること。

  *贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、必要書類を添えて

  贈与税の申告をする必要があります。贈与税の配偶者控除により贈与税がかか

  らない場合でも申告は必要になります。


 相続対策として贈与税の配偶者控除を使う場合には、相続税が課税されることが

前提条件ですが、相続税額が少ない場合には、注意が必要です。不動産の名義変更

にかかるコストを比較検討の計算に入れる必要があります。贈与で移動した不動産

の名義を変更する際には、登録免許税と不動産取得税がかかってきます。不動産の

登録免許税は、相続の場合には固定資産評価額の0.4%ですが、贈与の場合には2%

かかります。不動産取得税は、相続の場合には課税されませんが、贈与の場合には

課税されます。贈与と相続の場合の不動産の名義変更コストの差も考慮に入れる必

要があります。

 また、贈与を受けた側の配偶者が先に亡くなることがリスクとしてあげられます。

相続対策としては、贈与をした側の配偶者が先に亡くなることが前提条件なのです

が、その逆のケースです。贈与を受けた側の配偶者が先に亡くなれば、相続により

贈与をした側の配偶者に資産が戻ってしまいます。その場合、不動産の名義変更コ

ストだけがかかってしまいます。


 以上、贈与税の配偶者控除の制度内容と相続税対策からみた内容を検討してみま

した。贈与税の配偶者控除を使った相続税対策は、緊急に相続対策が必要な場合な

ど効果を発揮しますが、配偶者間での資産の移動であるため二次相続の問題も発生

します。条件の変化によるリスクもあることから多面的な検討が必要となります。 

 相続税は事前の対策により節税効果が出やすいこともあり、早めの対策をお勧め

します。相続についての不安やご不明な点等ございましたら、お気軽にお問い合わ

せください。




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