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税 務
相続税【小規模宅地の特例】の注意点
税経管理第3部 部長 林
相続税の増税が検討されています。基礎控除の縮小で課税対象者が増え、
最高税率も引き上げられます。今回は先送りされましたが早ければ2015年
1月から改正される可能性があります。
しかし、2010年度から先行して実質増税となっている「小規模宅地特例」
などもあり、この部分のおさらいと、もめやすいポイントを紹介します。
要件があえば、高額な減額が認められますので、上手に活用しましょう。
【小規模宅地等の特例一覧表】
相続土地 | 相続する人 | 改正前 | 改正後 | 上限面積 |
自宅 | ◎配偶者 ◎持ち家なしの別居親族(申告期限まで保有) ◎同居、又は生計を一の親族(申告期限まで保有・居 住) 上記全ての◎を@とする |
80%減 | 80%減 | 240u |
上記@以外の人 | 50%減 | 減額なし | 200u | |
共同相続人に@に該当する人がいる場合 | 80%減 | 減額なし | 240u | |
自宅兼そ の他用途 |
@に該当する人 | 全宅地 80%減 |
自宅部分 80%減 他条件ご と |
ケースに より変化 |
会社、工場 | 親族(申告期限まで保有、事業引き継ぎ)A | 80%減 | 80%減 | 400u |
A以外の人 | 50%減 | 減額なし | 200u | |
共同相続人にAに該当する人がいる | 80%減 | 減額なし | 400u | |
アパート、 駐車場 |
Aに該当する人 | 50%減 | 50%減 | 200u |
A以外の人 | 50%減 | 減額なし | 200u |
※主なケースであるが、共同相続人がいるケースは、その人の持ち分に対する
減額率となり、上限面積は合算の面積となる
老人ホームへの入居時の終身利用権に要注意!
昨年8月、東京地方裁判所で、有料老人ホームに入居していた被相続人が
死亡したケースで、残された自宅について、小規模宅地の特例が認められな
い判決が下されています。家財道具も自宅に置いたまま、電気及び水道の契
約も継続していたにもかかわらず、生活の拠点が老人ホームにあったと判定
されてしまいました。
国税庁は老人ホーム入所後に自宅が空き家になった場合でも、小規模宅地
の特例を受けるための要件を定めています。
この判例のケースでも最初の三つは満たされていましたが、最後の二つに
問題がありました。
老人ホーム入所により自宅が空き家になった場合に
小規模宅地の特例を受けるための5つの要件
@ 身体または精神上の理由で介護を受ける必要があり、老人ホームへ入所し
たと認められること
A 被相続人がいつでも生活できるように建物の維持管理が行われていたこ
と
B 老人ホーム入所後、自宅を賃貸などにしていなかったこと
C 老人ホームの所有権が本人または親族によって取得されていないこと
D 老人ホームの終身利用権が取得されていないこと
⇒(有料老人ホーム)月額賃料を支払うよりも、終身利用権を取得した方
が安くなるが、相続時に小規模宅地の特例は受けられなくなります。
⇒(特別老人ホーム)病気治療のための入院と見なされるので、相続時に小
規模宅地の特例の減額対象となります。
老人ホームで亡くなるケースも多いですが、気をつけないと自宅の相続税
額が跳ね上がってしまいますので、注意が必要です。
いずれにしても、老人ホームへの入所は、事前にきちんとそろばんを弾い
た上でしたほうが良いといえそうです。
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