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税 務


           グループ法人税制概略


                     税経管理第7部 部長 小島


1 概要
  
 平成22年度税制改正で創設されたグループ法人税制とは、法人税の単体

申告を前提としたグループ内取引等に関する税制の整備と連結納税制度の見

直しなどのことです。そこで従来の「連結納税制度」のほかに「グループ法

人単体課税制度」が創設されました。その結果、連結納税制度は従来どおり

「100%グループ内法人」が選択した場合に適用され、それを選択しなかった

「100%グループ内法人」の場合にはグループ法人単体課税制度が強制適用さ

れることになりました。


2 グループ法人単体課税制度と連結納税制度の比較

税  制 グループ法人単体課税制度 連結納税制度
適用範囲 内国法人(個人や外国法人を
頂点とする企業グループも
対象)
内国法人
株式保有割合 100% 100%
適用方法 強制適用 任意適用
申告・納税主体 各単体法人 連結親法人
100%グループ
内所得通算
不可
100%グループ
内法人間の資産
移転
譲渡損益の繰延、再譲渡時に譲渡損益を認識(注1)
100%グループ
内法人間の寄付
損金(支出法人)・益金不算入(受取法人)(注2)
個人株主を頂点とするグループ内法人間については適
用されない。
受取配当等の益
金不算入
全額益金不算入(注3)
個人株主を頂点とするグループ内法人間については適
用されない。
中小法人特例の
適用
直列関係法人の資本金5億
円未満かつ自社の資本金1
億円以下の法人のみ運用可
親会社の資本金1億円以
下かつ自社の資本金1億
円以下の法人のみ適用可

(注1)グループ内の取引から生ずる資産の譲渡損益を繰り延べることにより

円滑な資産移動が可能になります。対象となる資産は@固定資産A販売用を含

む土地B有価証券、金銭債権および繰延資産であり、棚卸資産および帳簿価額

一千万円未満の資産は除かれます。


(注2)グループ内における寄付金について、支出した法人側では、全額を損金

不算入とし、受け入れた法人側では、全額を益金不算入として、グループ内で

の資金移動における損益のインパクトが排除されます。


(注3)従来、100%子会社からの受取配当等について、負債の利子相当額を控

除した額を益金不算入としていましたが、今回の改正で受取配当等の全額が、

益金不算入となり、グループ内の資金移動がスムーズになります。


3 100%グループ内法人とは


 100%グループ内法人とは、親会社が直接100%の株式を保有する場合だ

けでなく、その親族などが保有する場合も含まれます。



そのため、法人だけでなく個人が保有する場合も含まれるので、親と子供で区分

して保有している場合だけでなく、事業承継等の対策のために、兄弟等で異なる

会社の株式を保有している場合にも適用の対象となりますので、同族会社が多い

中小企業への適用も広く見込まれています。


4 適用時期

 グループ法人税制は平成22年10月1日以後に行う譲渡等に適用されます。

事業年度の観点からみると、移転資産の譲渡損益を繰り延べる制度については、

平成22年度10月1日前に開始する事業年度であっても10月1日から発生す

るグループ法人税制対象取引に適用されるため、留意が必要です。つまり、3月

決算法人の場合、平成22年4月1日〜9月30日までの取引について旧法が適

用され、平成22年10月1日〜平成23年3月31日までの取引についてグル

ープ法人税制が適用されることとなります。




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