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経営・税務


                   緊急経済危機対策

                  税経管理第1部 主任 角田 伸一


            ≪ 概 要 ≫

  深刻度を増す「世界金融危機」と戦後最大の「世界同時不況」の中で、

 短期的な危機(経済の底割れの急速なリスク)と、構造的な危機(世界経

 済の大調整への対応)を抜本的に克服するため、雇用対策・金融対策・低

 炭素改革など、さまざまな緊急経済対策が21年度補正予算に織り込まれま

 した。

  今回はその中でも中小企業に関係のある施策や、税制改正等を幾つか紹

 介します。


【1】雇用対策 〜緊急雇用対策の拡充・強化〜

 (1) 雇用調整助成金の拡充等

 《労働者の解雇等を行わない場合に、助成率を上乗せ》

通常の助成金 上乗せ後
雇用調整助成金 2/3 3/4
中小企業緊急雇用安定助成金 4/5 9/10

《残業を大幅削減し、解雇等をしない場合の非正規労働者一定額助成》

有期契約労働者  派遣労働者 
中小企業事業主 年30万円 年45万円
中小企業事業主以外の事業主 年20万円 年30万円

 (2)再就職支援・能力開発対策・住宅生活支援

   雇用保険未受給者を対象に職業訓練中の「訓練・生活支援給付」

    月額10-12万円の給付、貸付け(上限8万円)

   雇用と住居を失った者に対しての住居確保・生活支援等

    再就職支援付き住宅手当(つなぎ貸付)

    総合支援資金(上限月額20万円 最長1年)


【2】金融対策 〜中小企業等の資金繰り改善〜

 (1)緊急保証の拡充

    信用保証協会による緊急融資枠を20兆円から30兆円へ拡大

    据置期間を最大2年間に延長

    8,000万円を超える無担保保証ニーズに柔軟に対応   


 (2)セーフティネット貸付の拡充等

    日本政策金融公庫による貸付枠を9兆円から12兆円へ拡大

    商工中金の貸付枠(危機対応)を0.9兆円から3.3兆円へ拡大

    無担保・無保証人融資の金利の引き下げ

    倒産対応資金貸付(関連企業の倒産により、経営を圧迫)の拡充


 (3) 小規模事業者経営改善資金(マル経融資)の拡充

現 状 拡充策
返済期間(運転資金) 5年(据置6カ月) 7年(据置1年)
返済期間(設備資金) 7年(据置6カ月) 10年(据置2年)
融資限度額 1,000万円 1,500万円

【3】環境対策 〜地球温暖化対策・景気対策〜

 (1) 環境対応車の普及促進(21年4月10日遡及適用)

  《経年車の廃車を伴う新車購入補助金》

要  件 登録車 軽自動車
車齢13年超車から2010年度燃費基準達成車へ 25万円 12.5万円

《経年車の廃車を伴わない新車購入補助》

要  件 登録車 軽自動車
排出ガス性能4☆かつ2010年度燃費基準+15% 10万円 5万円

 (2) エコポイントによるグリーン家電の普及促進(21年5月15日以後購入)

要  件 エアコン 冷蔵庫 テレビ
統一省エネラベル4☆以上の購入 5%相当 5%相当 5%+5%(地デジ)相当
さらに、リサイクル(買換)を
伴う場合
リサイクル
料金相当
リサイクル
料金相当
リサイクル料金
相当(平均3%)

【4】税制改正 〜住宅取得・中小企業の活動支援〜

 (1) 住宅取得等のための金銭贈与に係る贈与税の時限的軽減措置(案)

    期間   21年1月1日から22年12月31日までの2年間限定

    対象者  20歳以上の者が直系尊属から受ける贈与

    適用金額 住宅取得等のための金銭の贈与に限り500万円まで

現 状 改正案
暦年課税 基礎控除110万円 基礎控除110万円+非課税枠500万円=610万円
相続時精算課税 特別控除3,500万円 特別控除3,500万円+非課税枠500万円=4,000万円

 (注意点) 

  父・母双方及び祖父母からの贈与は対象、合計で500万円が上限

  1人からの贈与について、暦年課税と相続時精算課税を重複は不可

  贈与を受けた年の翌年3月15日までに、居住の用に供することが必要

  増改築のための金銭の贈与についても対象になる見込み


 (2) 中小企業の交際費課税の軽減(案)

    期間   21年4月1日以後に終了する事業年度から(6月申告から)

    対象者  資本金が1億円以下の法人

    適用金額 定額控除限度額600万円

 (注意点)

   定額控除限度額に達するまでの交際費金額の90%が損金算入額


(3)試験研究費の総額に係る税額控除制度の拡充(案)

現 状 改正案
控除上限額 法人税額の20% 法人税額の30%(21年22年のみ)
控除限度超過額 翌期控除可能 24年まで控除可能(法人税額の30%まで)

  以上、緊急経済危機対策より主なものを掲載しましたが、税制改正につき

 ましては国会の審議をへて、21年度補正予算は通っているのですが、法の整

 備待ちになっています。また、詳細等につきましては内閣府ホームページな

 どに掲載されていますが、不明点や質問等は遠慮なく各担当者へお尋ねくだ

 さい。

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