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税 務


          平成19年度税制改正の概要


                   税経管理第11部 主任 大川 晃


1 概要

 今回の改正は減税規模4500億円とされていますが、主として企業向け

減税です。一方で、個人には既に定率減税が完全撤廃されることが確定して

いますので、平成19年度は1兆円の増税となります。


2 主な改正項目

(1) 減価償却

 @ 償却可能限度額及び残存価額の廃止

 A 法定耐用年数の見直し


(2) 法人関係

 @ エンジェル税制の期限延長と要件の緩和

 A 留保金課税制度の適用除外

 B 特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度の見直し

 C 定期同額給与の見直し

 D 中小企業基盤強化税制の見直し

 E 移転価格税制につき納税猶予制度の創設

 F 組織再編成に伴う国際的な租税回避の防止措置


(3) 個人関係

 @ 住宅ローン控除の特例の創設

 A 住宅のバリアフリー改修促進税制の創設

 B 特定の居住用財産の買換え及び交換の長期譲渡所得の課税の特例の

  見直し

 C 取引相場のない株式等に係る相続時精算課税制度の特例の創設

 D 取引相場のない種類株式の相続税等の評価方法の明確化

 E 相続等により取得した居住用財産の買換え及び交換の長期譲渡所得の

  課税の特例の廃止

 F 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除制度の延長

 G 特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除制度の延長


(4) 金融・証券税制

 @ 上場株式等の配当及び譲渡益の軽減税率の特例制度の延長


(5) その他

 @ 寄付金控除の控除対象限度額の引き上げ

 A 電子申告に関する環境整備等

 B 信託を利用した租税回避の防止措置


 以上が改正の主な項目ですが、特に中小会社等に関係の深い項目について

簡単にご説明致します。


3 減価償却制度

(1) 償却可能限度額及び残存価額の廃止

 @ 平成19年3月31日以前取得の既存資産については、定率法・定額

  法とも従来どおりの償却方法により償却を行い、償却可能限度額(95%)

  まで償却が進んだ後5年間で均等償却をすることで、全額(100%)償却

  できるようにする。

    5年間の各年の償却額は、

      償却額=取得価額の5%×1/5

      第5年目には、備忘価額1円を残します。


 A 平成19年4月1日以後取得の新規取得資産については、償却可能限度

  額(取得価額の95%)及び残存価額を廃止し、取得価額全額(備忘価額1円

  を残す。)まで償却できることとする。

   また、定率法の償却率については、「定額法の償却率の2.5倍」(250%

  定率法)を用いることとされ、当該償却率で計算した減価償却費が次の一

  定の金額を下回る場合には、定率法から定額法へ切り替えて、次の一定の

  金額を償却限度額とすることとする。

 
   一定の金額=期首帳簿価額/(法定耐用年数−経過年数)

    
(イ)定率法償却率・・・(1/耐用年数)×250%

  ※ 耐用年数最短の2年の場合

    (1/2)×250%=1.250 → 1.000


(ロ)250%定率法導入による定額法への切り替え

取得価額1,000千円 耐用年数6年(250%償却率0.416)の場合

250%定率法の
限度額
250%定率法の
期末帳簿価額
一定の金額
1年目 416千円 584千円 166千円
2年目 243千円 341千円 116千円
3年目 142千円 199千円 85千円
4年目 82千円 117千円 66千円
5年目 48千円 67千円 58千円 ※
6年目 28千円 39千円 58千円 ※

※ 5年目・6年目の償却費限度額が一定の金額を下回ることとなるため、

  5年目には定率法から定額法に切り替えて、一定の金額(58千円)を

  償却限度額とする。


(2) 耐用年数の短縮

  ・ フラットパネルディスプレイ製造設備  10年 ⇒ 5年

  ・ フラットパネル用フィルム材料製造設備 10年 ⇒ 5年

  ・ 半導体用フォトレジスト製造設備     8年 ⇒ 5年


4 中小同族会社に対する減税措置

(1) 中小同族会社に対する留保金課税制度の撤廃

  資本金の額又は出資金の額が1億円以下の会社は、留保金課税制度を廃止

 する。


(2) 特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入の適用除外基準の引上げ

  昨年導入された「特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度」につい

 て平成19年4月1日以後に開始する事業年度から、適用除外基準である基

 準所得金額を現行の800万円から1600万円に引き上げる。

  つまり、大まかですが、会社の利益と社長の給料を合計して1,600万円以下

 の会社であれば、この増税項目の対象外ということになります。


5 取引相場のない株式等に係る相続時精算課税制度の特例の創設

  相続時精算課税について、推定相続人の一人が平成19年1月1日から平成

 20年12月31日までの間に取引相場のない株式等の贈与を受ける場合には、

 次の要件を満たすときに限り、60歳以上の親からの贈与について相続時精算

 課税制度の適用を選択できることとし、当該株式等の贈与については、同制度

 の2,500万円の非課税枠を3,000万円とする。

 (1) 当該会社の発行済株式等の総額(相続税評価額ベース)が20億円未

    満であること

 (2) 次のすべての要件をこの特例の選択に係る贈与税の申告期限から4年

    を経過する時において満たしていること。

    @ 当該受贈者が当該会社の発行済株式等の総数の50%超を所有し、か

     つ、議決権の50%超を有していること。

    A 当該受贈者が当該会社の代表者として当該会社の経営に従事してい

     ること。

 (3) その他所要の要件を満たすこと。


  経営状況が好調な中小企業のオーナー経営者にとって、後継者である子ども

 (代表者となる場合に限る)に生前に、かつ、円滑に事業承継を図るためには

 有効な規定の創設であると考えられます。


6 住宅・土地税制

(1) 住宅バリアフリー改修促進税制の創設

  一定の居住者が、住宅ローンを借り入れて一定のバリアフリー改修工事を含

 む増改築工事を行った場合に、当該家屋を平成19年4月1日から平成20年12月31

 日までの間にその者の居住の用に供したときは、一定の要件の下にその住宅ロ

 ーン残高の一定割合を5年間所得税額控除する(住宅ローン減税との選択)

 ※ 「一定の居住者」とは、次のいずれにも該当する者をいう。

   @ 50歳以上の者

   A 介護保険法の要介護又は要支援の認定を受けている者

   B 障害者である者

   C 居住者の親族のうち上記AもしくはBに該当する者又は65歳以上の者

    のいずれかと同居している者

 ※ 「一定のバリアフリー改修工事」とは、次に該当する工事で、その工事費

  用の合計額が30万円を超えるものをいう。

   @ 廊下の拡充        D 手すりの設置

   A 階段の勾配の緩和     E 屋内の段差の解消

   B 浴室改良         F 引き戸への取替え工事

   C 便所改良         G 床表面の滑り止め化


(2) 住宅ローンを有する場合の所得税額の特別控除の控除額の創設

  平成19年及び20年に入居する者に対して、控除率を引き上げた上で控除

 期間を10年から15年に延長する制度を創設する。

  また、この制度は従来の住宅ローン減税との選択適用となっています。

居住年 控除期間 住宅借入金の
年末残高
適用年・控除率
平成19年 15年 2,500万円以
下の部分
・ 1年目から10年目まで 0.6%
・11年目から15年目まで 0.4%
平成20年 同上 2,000万円以
下の部分
同 上


 以上、平成19年度税制改正大綱より主なものを取り上げましたが、正式な決定

事項ではありません(ほぼ同内容の法案が国会通過されるのが通例ですが)。

また、個々の項目の適用時期など詳細についても不明点がございます。

詳細な取扱いにつきましては、各担当者にお尋ね下さい。


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