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税  務


            
借地権と認定課税

                      税経管理第3部 部長 木樽康昌


 「借地権」−あまり聞きなれない言葉だと思います。「土地を借りる権利」と言い

換えることができます。土地を他人に貸し付け、建物などを建てさせたときに、土

地の賃借権というべき借地権が設定されたことになります。第三者間の取引では、

土地所有者(地主)は、建物が建設されることにより土地の使用制限を受けること

から、その土地の逸失利益確保のため、借地人に対して借地権の対価として権利金

を請求することになります。これが同族関係者等の特殊関係者間の取引であれば、

本来授受すべき権利金が授受されなかったり、地代の設定が曖昧だったりします。

ここに本来もらうべき権利金を未実現ではあるが価値として認定するという税務上

の考え方が存在し、その認定した価値に対して課税する認定課税という特殊な課税

形態があります。


民法上の借地権

 旧来の「借地法」「借家法」「建物保護に関する法律」に替わり、民法の特別法と

して平成3年に改正(平成4年8月施行)された「借地借家法」第2条において「借

地権とは建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう」とされています。 

 民法において借地権の本質は、借地上の建物を所有するものに対する保護配慮に

あるということができます。一方、土地の利用権としての借地権が手厚い保護規定

を設けたことによって財産権としての取引価値を持つようになり、「一定期間だけ

利用したい」という本来の意味での借地希望者にとって利用しづらい制度となった

ことから、借地利用期間の限定付き契約「定期借地権」の制度も導入されています。

 借地権の形態を分類すると6通りとなります。

       旧法  旧法より継続されている借地権

       新法  普通借地権

           定期借地権

           建物譲渡特約付借地権

           事業用借地権

           一時使用目的の借地権


地主と借地人との契約ケース

 地主が法人か個人かで2区分、借地人が法人か個人かで2区分に分類され、合

計4区分となります。さらに地主と借地人との関係、つまり第三者間であるのか

同族関係者等の特殊関係者間であるのかで2区分の分類が必要となります。


     @地主が個人で借地人が個人 第三者間

     A地主か個人で借地人が法人 第三者間

     B地主が法人で借地人が個人 第三者間

     C地主が法人で借地人が法人 第三者間

     D地主が個人で借地人が個人 特殊関係者間

     E地主か個人で借地人が法人 特殊関係者間

     F地主が法人で借地人が個人 特殊関係者間

     G地主が法人で借地人が法人 特殊関係者間


借地権設定時における税務上の借地権設定方式のケース

大きく分けて4つです。

    @ 権利金支払方式―――土地の時価に借地権割合を掛けた価額の権  

                利金(通常の権利金)の支払をもって設定。

    A 相当の地代支払方式−土地の自用地としての価額に年6%を掛

                けた額の地代年額(相当の地代)を収受

                する。相当の地代を収受することにより

                権利金に代える。

    B 無償返還の届出方式−税務署に借地契約後に土地を無償で返還

                する旨の届出を地主と借地人の連名で届出

                する。

    C 使用貸借方式――――無償での土地の貸借。


税務上問題となるケース―借地権設定時

@ 地主が個人で借地人が個人

 権利金をまったく収受しないか、通常の権利金より少なく収受し、相当の地

 代を収受しない場合。

 借地人が、借地権価額の贈与を受けたものとして、贈与税の課税を受ける。


A 地主か個人で借地人が法人

 権利金をまったく収受しないか、通常の権利金より少なく収受し、無償返還

 の届出書を未提出、又は使用貸借で無償返還の届出書を未提出の場合。

 借地人は、借地権の受贈を受けたとして認定課税を受ける。


B 地主が法人で借地人が個人

 権利金をまったく収受しないか、通常の権利金より少なく収受し無償返還

 の届出書を未提出、又は使用貸借で無償返還の届出書を未提出の場合。

 地主は、権利金収入の認定課税を受ける。

 借地人は、借地権の受贈を受けたとして認定課税を受ける。


C 地主が法人で借地人が法人

 権利金をまったく収受しないか、通常の権利金より少なく収受し無償返還

 の届出書を未提出、又は使用貸借で無償返還の届出書を未提出の場合。

 地主は権利金収入の認定課税を受ける。

 借地人は、借地権の受贈を受けたとして認定課税を受ける。


まとめ

 借地権設定時においては、通常の権利金を収受する場合や相当の地代を収受する

場合に限り、権利金の認定課税の問題は発生しません。問題となるケースは、@地

主と借地人が個人対個人では相当の地代を収受しない場合、A法人が絡む場合には、

相当の地代を収受しない場合でかつ無償返還の届出書が提出されない場合と使用貸

借で無償返還の届出書が提出されない場合です。以上が認定課税されるケースです。

 法人が絡む場合での認定課税を受けないポイントは、無償返還の届出書と言えそ

うです。

最後に

 借地権設定時(入口課税)に絞って、借地権及び権利金の認定課税の問題をまと

めましたが、借地契約関係では、借地権設定時(入口課税)のほかに、借地契約期

間中(中途課税)や底地又は借地権の評価時(出口課税)などの課税時点によって

も、地代の額や評価額に絡む問題がでてきます。借地契約を権利金の授受や地代年

額、土地の時価額とともにもう一度見直してみてください。

借地に係る諸問題については、各担当者へ一度ご相談ください。


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